外国人の空き家購入はなぜ「問題」として語られるのか、白馬村の事例と規制の行方

外国人の空き家購入が問題視される理由、規制と歓迎の分裂
✒ コラム / 図版:タネアカシ編集部

長野県白馬村の空き家を360万円で購入したオーストラリア人夫婦のニュースが話題になった同じ週、政府は外国人による土地取得の規制強化に向けた議論を進めています。片方は「歓迎したい移住者」、もう片方は「規制すべき投資マネー」。この二つは、本当に同じ「外国人の土地取得」という言葉でくくってよい現象なのでしょうか。

同じ週に起きた、二つの正反対のニュース

2026年9月9日、BUSINESS INSIDER JAPANが配信した記事が注目を集めました。オーストラリア出身の旅行系YouTuber夫婦が、長野県白馬村の空き家を360万円(諸費用込みで約410万円)で購入し、7月に入居したという内容です。タイでは外国人が土地を所有できず「25年か30年の借地契約しか結べない」ため、いつでも戻れる本拠地を求めて日本の空き家に行き着いたといいます。

一方、同じ時期に政府は外国人による土地取得のルールの在り方検討会を進めています。日本経済新聞の報道によれば、不動産登記の際に取得者の国籍情報を登録する制度の検討が進んでおり、自民党と日本維新の会は2026年の通常国会で規制強化の法整備を進める方針を連立合意に盛り込みました。

📌 出典: BUSINESS INSIDER JAPAN(Yahoo!ニュース配信)日本経済新聞内閣官房 検討会資料。 解釈と考察は当サイトが独自に執筆しています。

弁護士の紀藤正樹氏がこの投稿で指摘しているのは、日本が外国人の土地所有を原則自由にしている珍しい国だという点です。この「自由さ」こそが、白馬村の夫婦を迎え入れた仕組みであると同時に、いま国会で規制論議の対象にもなっている仕組みでもあります。同じ制度が、歓迎と警戒の両方の理由になっているのです。

ニュースだけを見ると矛盾しているように感じます。片方では地方が外国人の移住を(結果的に)歓迎し、もう片方では国が外国人の土地取得を規制しようとしている。この違和感の正体を、順を追って整理します。

「外国人の土地取得」は一枚岩ではない

結論から言うと、いま「問題」として語られている外国人の土地取得には、性質のまったく異なる二つの現象が混ざっています。

  • 投資型: 北海道ニセコのようなリゾート地や、都市部のタワーマンションを狙う海外資本の取得。現代ビジネスの報道では、ニセコの土地評価額は6年で約14倍に上昇したとされ、周辺の富良野市でも住宅地の地価上昇率が北海道トップ級になっています
  • 居住型: 白馬村のように、地元の人口減少で買い手がつかなくなった空き家を、住む目的で個人が取得するケース。総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万戸(空き家率13.8%)と過去最多を更新しました
  • 安全保障型: 防衛施設や国境離島周辺の土地取得。長崎県対馬などでは、自衛隊基地に近い土地が外資に取得された事例が国会でも取り上げられており、2022年施行の重要土地等調査法はこの種の土地を対象にしています

この三つは、発生している場所も、当事者の目的も、周囲に与える影響もまったく違います。投資型は地元の日本人が住宅を買えなくなるという問題を生み、安全保障型は施設周辺の情報管理という問題を生みます。ところが居住型は、そもそも日本人が誰も買わなかった物件に、住む人が現れるという話です。損をする地元の人がいません。

「外国人が土地を買う」という一文だけを見て、投資型と居住型を同じ危険度で語ることはできない。

実際、地方自治体の側は居住型の外国人取得を必ずしも迷惑がっていません。日本経済新聞は、地域の空き家を外国人就労者の住まいとして活用し、地域活動の担い手不足を補う動きを報じています。空き家バンクを運用する自治体の多くは、国籍を問わず定住・移住希望者へ物件を紹介する方針を取っており、白馬村のような山間部の集落にとって、住んでくれる人がいること自体が目的化している面すらあります。

なぜ二つを分けずに語ると危ういのか

ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。政府の検討会が本来主眼に置いているのは、安全保障上重要な土地と、地価を吊り上げる投資マネーへの対応です。しかし世論やSNSでの反応は、「外国人が日本の土地を買っている」という一点にまとめられがちで、白馬村のような居住目的の取得までが、漠然とした警戒の対象に含まれてしまいます。

制度設計として難しいのは、取得者の国籍だけを基準に規制をかけると、投資型も居住型も同じ網にかかってしまうことです。日本経済新聞の報道でも、外国企業や外国人だけを狙い撃ちする規制は、WTOのサービス貿易一般協定(GATS)などの国際協定に抵触しかねないという論点が、有識者会議で議論されています。つまり「外国人だから規制する」という単純な線引きは、法的にも実務的にも簡単ではありません。

その結果として今、政府が現実的に進めているのは、取得を禁止するのではなく、取得後に国籍情報を把握できるようにするという、登録制度の整備です。誰が、どの土地を、どんな目的で持っているかを可視化することが、投資型と居住型を後から選別するための土台になります。規制の本丸は「買わせない」ことではなく、「買った後に何が起きているかを国が把握できる」ことにあります。

補足: 対馬などの安全保障上の懸念は、あくまで防衛施設周辺という限定された地域の事例であり、白馬村の空き家取得と直接結びつく話ではありません。両者を並べて語る報道や投稿もありますが、当サイトが確認できた範囲では、白馬村の事例に安全保障上の懸念が指摘された事実はありません。

🎥 関連動画:【"億ション"当たり前に】外国人投資家の影響は? 高市総理が外国人土地取得ルールの見直し検討を指示【news23】

出典:TBS NEWS DIG/YouTube。サムネイルをクリックすると再生します(クリックするまで動画は読み込みません)。

この動画が扱っているのは、主に都心マンションの高騰という投資型の側面です。白馬村のような居住型の空き家取得とは、規制論議の中でも扱われ方が異なることが、報道の切り口からも見て取れます。

「区別せず一律に規制すべき」という反論への応答

ここまでの主張に対しては、当然強い反論があります。自分で書いておきます。

「今は善意の移住者でも、外国人所有の空き家が地方に広がれば、いずれ所有者不明化や相続トラブル、コミュニティの変質につながるのではないか。区別して規制を緩めるのはリスクだ」。この懸念は筋が通っています。日本国内の空き家自体、すでに所有者不明・相続放置が社会問題になっており、それが外国に住む相続人に渡った場合、連絡や手続きがさらに難しくなる可能性は否定できません。

それでも、私たちはこう考えます。この懸念に対応する手段は、居住目的の個人取得まで委縮させることではなく、取得後の情報を把握する仕組みを整えることです。理由は単純です。地方の空き家にとって最大のリスクは「誰も買わない」ことであり、それは外国人所有によるリスクよりも、すでに確実に、そして大量に発生しています。総務省の統計が示す900万戸という数字は、その現実の大きさを表しています。

国籍の登録制度が整えば、投資型の取得と居住型の取得を、後からでも区別して扱えるようになります。先に「誰が買ってはいけないか」を一律に決めるのではなく、まず「誰が何を持っているか」を可視化する。その順番を守れれば、白馬村のような事例まで萎縮させずに、本来警戒すべき投資型・安全保障型の取得に的を絞った対応ができるはずです。

外国人が地方の空き家を買うことを、あなたはどう思いますか?

よくある質問

外国人は日本のどんな空き家を買っているのですか?

主に地方の過疎地にある、日本人の買い手がつかない古い戸建てです。長野県白馬村では2026年、オーストラリア人夫婦が360万円で空き家を購入し、YouTubeなどを通じて同様の事例が広がっています。日本は外国人による土地所有を原則自由としているため、居住や移住目的での取得が可能です。

なぜ政府は外国人の土地取得を規制しようとしているのですか?

安全保障上の懸念と、リゾート地・都市部での地価高騰への対応が主な理由です。政府は有識者会議を設け、不動産登記時に国籍情報を登録する制度の検討を進めています。対象となっているのは主に、防衛施設周辺や北海道ニセコのような投資対象化した地域で、地方の空き家取得とは性質が異なります。

空き家問題の解決に外国人の購入は役立ちますか?

買い手がつかず放置されるより、居住目的で活用されるほうが地域にとって利点はあります。総務省の調査では全国の空き家は900万戸を超えており、自治体の中には空き家バンクを通じて移住者(外国人を含む)を積極的に受け入れているところもあります。ただし空き家対策と土地取得規制の議論が同じ枠で語られると、地方の受け入れ努力が損なわれる懸念があります。

まとめ

「外国人が土地を買う」というひとつの言葉の下に、リゾート地の地価を吊り上げる投資マネーと、誰も買わなかった空き家に住みつく移住者という、正反対の現象が同居しています。政府の規制論議が狙っているのは主に前者ですが、報道やSNSの反応では両者が一緒くたに語られがちです。

白馬村の空き家に住み始めた夫婦を「問題」として警戒するのか、「900万戸の空き家」を減らす一例として見るのか。その答えは、取得の目的と場所を区別する制度をどれだけ丁寧に作れるかにかかっています。区別を怠れば、本当に警戒すべき投資マネーは規制の抜け道を探し続け、地方は住んでくれるはずだった移住者を失う。両方を同時に失う結果だけは避けたいところです。

関連記事:【物議】ゆで太郎「外国人発言」はなぜ炎上したのか / 時事・社会の記事一覧 / 生活・お金の記事一覧

▶ 次に読む 🎤 芸能・エンタメ 物議堀大輔のショートスリーパー説、今夜1週間配信へ ショートスリーパーを名乗る堀大輔氏が、9月9日夜から1週間の連続ライブ配信に挑みます。投資勧誘疑惑や生配信中の激高騒動が相次ぐ中、1日30分睡眠は医学的に成立するのか、経緯と賛否を整理します。

🔗 あわせて読みたい