Twitter.nowが商標放棄を理由に登場、ブランドが消える「3年」のルールとは

Twitter.nowはなぜ復活できた?商標の3年ルール
✒ コラム / 図版:タネアカシ編集部

米国で8月26日、「Twitter」を名乗る新しいSNSが始まりました。運営はイーロン・マスク氏のX社ではありません。元Twitterの法務担当者が立ち上げた別のスタートアップです。彼らの主張はただ一つ、「Xはもう、Twitterという商標を使っていない。だから権利は消えている」。看板を掛け替えただけのはずの名前が、なぜ本当に消えることになったのでしょうか。

「Twitter」を名乗る新SNSが本当に現れた

新サービスの名前は「Twitter.now」。運営するのは、米バージニア州の新興企業Operation Bluebirdです。共同創業者は、かつてTwitter社の法務部門(ジェネラルカウンセル)を務めたスティーブン・コーツ氏と、商標専門の弁護士マイケル・ペロフ氏。いずれも、マスク氏がTwitterを買収する前の「中の人」だった人物です。

Twitter.nowは、旧Twitterに似たタイムラインや、リプライ・リポストに相当する機能を備えています。目玉は「Vera」と呼ばれるAIです。GoogleのGemini系モデルを使い、投稿ごとに事実確認を行って信頼度スコアを表示します。ユーザーは「Trust Dial」というつまみを操作し、信頼度の低い投稿をどれだけタイムラインに表示するか自分で調整できる仕組みだといいます。

現在は早期アクセス段階で、参加には20ドルの「Founder」プランか、40ドル以上の「Fighter」プランへの登録が必要です。集めた資金はX社との訴訟費用に充てられると説明されており、ユーザーは実質的に、この裁判の「支援者」としてサービスに加わる形になります。ユーザー数はまだ数百人規模と報じられており、いわば実験段階のサービスです。

📌 出典: CNET Japan(Yahoo!ニュース)CybernewsTech Times。 解釈と考察は当サイトが独自に執筆しています。

商標は「使わない」だけで消えることがある

ここで多くの人が引っかかるはずです。「Twitter」という名前を、マスク氏の会社が今も所有しているのは間違いありません。なのに、なぜ他人がその名前を使ったサービスを堂々と始められるのでしょうか。

鍵になるのが「不使用による放棄」という考え方です。米国の連邦商標法には、商標権者がその商標を3年間まったく使わなかった場合、権利を放棄したものと推定するというルールがあります。Operation Bluebirdは2025年12月、この規定を根拠に、Xの「Twitter」および「tweet」の商標登録を取り消すようUSPTO(米国特許商標庁)に105ページに及ぶ申立てを行いました。マスク氏が2023年、「Twitterというブランド、そして少しずつすべての鳥に別れを告げる」と自ら発言していたことが、放棄の意図を示す証拠として引用されています。

名前は変えても、消したつもりのなかった看板が、法律の上では本当に消えていることがある。

2026年4月の審理では、連邦地裁のコルム・コノリー判事が、口頭で踏み込んだ見解を示しました。「Xは、tweetという単語、Twitterの鳥のロゴ、そしておそらくTwitterという単語についても、知的財産権の主張を放棄したように見える」。ただしこれはあくまで審理の場での口頭の所感であり、正式な判決文はまだ出ていません。Twitter.nowは、この口頭所感を追い風と判断し、8月26日の公開に踏み切った形です。

実はこの「3年不使用」という発想、米国だけの特殊ルールではありません。日本の商標法50条にも、ほぼ同じ考え方の制度があります。登録から3年以上が経過し、かつ3年以上その商標が国内で使われていない場合、誰でも取り消しを求める審判を特許庁に請求できるのです。「使っていないブランド名を、抱えたまま独占し続けることは認めない」という発想は、日米で驚くほど共通しています。

Xは本当にTwitterを捨てたのか

とはいえ、話はそう単純でもありません。Xは今もドメインtwitter.comを保持し、アクセスすると自動でxアプリへ転送しています。アプリ内のコードや一部の表記に、旧ブランドの痕跡が残っているという指摘もあります。「完全に葬った」のか「表舞台から下ろしただけ」なのか、その境界線は思ったよりあいまいです。

この「あいまいさ」こそが、今回の紛争の本質だと考えられます。もしマスク氏が2023年の時点で、Twitterのドメインもロゴも投稿ボタンの呼び名もすべて即座に消し去っていたら、これほど争う余地は残らなかったでしょう。逆に、看板の一部を下ろしながら、別の一部をひっそり残し続けたことが、「使っているのか、いないのか」を判断しにくい灰色の3年間を生みました。商標法が3年という区切りを設けているのは、まさにこうした中途半端な状態を長く放置させないためです。

  • 2023年7月、マスク氏がTwitterからXへの改称を発表
  • 2025年12月、Operation BluebirdがUSPTOへ商標取消しを申立て
  • 2026年4月、連邦地裁の審理でコノリー判事が「放棄したように見える」と口頭で言及(正式判決は未了)
  • 2026年8月26日、Twitter.nowが早期アクセスとして公開

並べてみると分かるのは、これは一夜にして起きた話ではなく、「改称してから3年」という時間が満ちるのを、相手側が正確に見計らって動いた結果だということです。ブランドの扱いを中途半端なまま放置した期間そのものが、法律上の弱点になりました。

「所詮ネット上のお祭り騒ぎ」という反論

ここまでの話に対して、当然出てくる反論があります。自分で先に書いておきます。

「これは結局、法律のスキマを突いた売名行為であり、マスク氏の会社にも、まして一般の会社や個人にも関係のない話ではないか」。実際、Twitter.nowはまだ数百人規模のサービスで、正式な判決も出ていません。日本のネット上の反応も、「懐かしいTwitterが戻ってきた」という歓迎の声と同じくらい、「結局よく分からない有料サービスでは」という冷ややかな見方が広がっています。この慎重な受け止め方は、妥当な反応だと思います。

それでも私たちは、この件を「対岸の火事」として片づけるべきではないと考えます。理由は、「ブランドを段階的に、あいまいなまま縮小していく」という進め方自体が、業種を問わず珍しくないからです。旧社名のドメインだけ残す。旧ロゴを一部の書類にだけ使い続ける。SNSアカウントは放置したまま更新しない。今回Xがそうであったように、「完全にはやめていないが、実質的にはほぼ使っていない」という状態は、日本の中小企業や個人事業主のブランド運用でも十分に起こり得ます。

補足: Twitter.nowを巡る訴訟(X Corp. v. Operation Bluebird)は、2026年8月28日時点で最終的な司法判断が確定していません。コノリー判事の発言は審理での口頭所感であり、正式な判決文が今後どう出るかは未確定です。本稿はこの点を断定するものではなく、あくまで「商標が不使用で消えうる」という制度そのものを解説する目的で書いています。

「Twitter」の名前が別の会社のSNSに使われることに、あなたはどう感じますか?

よくある質問

Twitter.nowとXは同じ会社が運営していますか?

いいえ、無関係です。Twitter.nowは元Twitter法務担当者らが立ち上げた米国のスタートアップ「Operation Bluebird」が運営しています。イーロン・マスク氏のX社とは資本関係も業務提携もなく、両社は商標権をめぐって法廷で争っている当事者どうしです。

商標が「不使用」で消えるのは日本でも同じ仕組みですか?

考え方は共通しています。日本の商標法50条には、登録から3年以上が経過し、かつ3年以上国内で使用されていない商標について、誰でも取り消しを求める審判を請求できる制度があります。米国の連邦商標法にも、3年間の不使用が「放棄」の推定を生じさせるという考え方があり、Twitter.nowの主張はこの原則に基づいています。

Twitter.nowは今から使えますか?

2026年8月26日に早期アクセスとして開始されており、数百人規模のユーザーが参加していると報じられています。参加には20ドルの「Founder」または40ドル以上の「Fighter」という有料プランへの登録が必要で、料金はX社との訴訟費用に充てられるとされています。商標をめぐる訴訟は決着しておらず、サービスの継続性は保証されていません。

まとめ

Twitter.nowの騒動は、単なる懐かしさビジネスでも、話題づくりのお祭りでもありません。「使わなくなった名前は、いつか本当に他人のものになりうる」という、地味だけれど誰にでも関係しうるルールを、世界最大級のブランドが体現してしまった例です。

あなたの会社やお店に、更新を止めたまま残しているアカウントや、使わなくなったのに解約していない旧ブランド名はありませんか。「いつかまた使うかもしれない」という宙ぶらりんの3年こそが、今回Xの足元をすくった時間そのものでした。

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