試用期間中は本当にクビになりやすいのか、労働契約法16条から読み解く

【労働契約法16条】試用期間は本当にクビになりやすいのか
💡 答え合わせ / 図版:タネアカシ編集部

⚡ 結論だけ先に

  • 試用期間中でも、会社が理由なく自由にクビにできるわけではない。通常の解雇とほぼ同じ規制を受ける。
  • 根拠は労働契約法16条三菱樹脂事件の最高裁判決(最高裁判所大法廷 昭和48年12月12日判決)。試用期間は「解約権留保付労働契約」とされ、解雇には合理的理由と社会的相当性が必要。
  • ただし入社14日以内の解雇には、労働基準法21条4号により解雇予告(30日前告知や予告手当)が不要という例外がある。

「試用期間中だから、会社の判断でいつでもクビにできる」——就職・転職の相談サイトでは、この誤解にもとづく不安の声が絶えない。実際の法律の建てつけは、思われているよりずっと労働者寄りだ。

はじめに: この記事は労働契約法・労働基準法や判例にもとづく一般的な説明です。個別の事情によって結論は変わります。実際の判断は労働基準監督署の総合労働相談コーナー弁護士にご相談ください。

まず答え:試用期間中も「解雇」として扱われる

試用期間中の雇用契約は、判例上「解約権留保付労働契約」と呼ばれる。試用期間の開始時点ですでに労働契約は成立しており、本採用を拒否する(クビにする)ことは、法的には「解雇」の一種として扱われる。

最高裁判所大法廷 昭和48年12月12日判決(三菱樹脂事件)は、この本採用拒否についても「解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合」でなければ許されないという基準を示した。単に「なんとなく合わない」「気に入らない」は、解雇の理由として認められにくい。

🔍 よくある思い込みと、実際のところ

思い込み試用期間中は会社の一存で、理由なくクビにできる
実際試用期間中の雇用契約もすでに労働契約として成立しており(解約権留保付労働契約)、本採用拒否には労働契約法16条にもとづく客観的で合理的な理由と社会的相当性が必要
思い込み就業規則に「試用期間中はいつでも解雇できる」と書いてあれば、その通りになる
実際就業規則にそう書かれていても、労働契約法16条の規制を免れることはできない。理由の合理性は個別に判断される

根拠: 労働契約法16条、最高裁判所大法廷 昭和48年12月12日判決(三菱樹脂事件)。

試用期間は「お試し」であって、「無条件の解約権」ではない。

なぜ答えがバラつくのか

理由は主に3つある。1つ目は、「試用期間=お試し」という言葉のイメージが先行し、法的な保護が無いと誤解されやすいこと。

2つ目は、実際には試用期間中の解雇が通常の解雇よりもやや広い裁量で認められる場合があること。能力不足や適格性の欠如を判断するための期間という性質上、本採用後よりは判断の幅が広がる。この「やや広い」が「何でもあり」だと誤って伝わってしまう。

3つ目は、就業規則に「試用期間中はいつでも解雇できる」と書かれているケースがあり、それを見た人がそのまま信じてしまうこと。こうした規定も、労働契約法16条の規制を免れるものではない。

判断の分かれ目

⚖ どちらになるかの分かれ目

ケース結論根拠
入社14日以内の解雇解雇予告・予告手当は不要労働基準法21条4号
入社14日を超えてからの解雇30日前の予告、または予告手当(平均賃金30日分)が必要労働基準法20条
注意・指導しても勤務態度が改善しない場合の本採用拒否客観的合理性が認められやすい三菱樹脂事件判決の基準
「性格や社風が合わない」だけを理由にした本採用拒否合理的理由に欠け無効になりうる同上

見るところ: 「14日以内かどうか」は解雇の予告手続きだけの話。解雇そのものの正当性は別に問われる。

実際にどう動けばいいか

📝 このとおりに動けばいい

  • STEP 1本採用拒否(解雇)の理由を書面で求める口頭だけで済まさず、理由の明示を会社に依頼する。
  • STEP 2納得できない場合は証拠を残す業務指示のメール、評価面談のメモなどを保管しておく。
  • STEP 3解決しなければ相談窓口へ会社所在地を管轄する労働基準監督署の総合労働相談コーナーに相談する。

相談先: 総合労働相談コーナー(全国の労働基準監督署内、電話0570-001450)、法テラス。

試用期間中の解雇について、知っていた?

よくある質問

試用期間中に解雇されたら、失業保険(基本手当)はもらえますか?

雇用保険の加入期間などの条件を満たしていれば受給できる可能性があります。会社都合か自己都合かによって給付開始時期が変わるため、離職票の記載内容をハローワークで確認してください。

試用期間の長さに法律上の上限はありますか?

労働基準法に試用期間の長さそのものを直接定めた規定はありませんが、あまりに長い試用期間は労働者の地位を不安定にするとして無効と判断された裁判例があります。一般的には3か月から6か月程度が多く用いられています。

「試用期間中だから」と口頭で解雇を告げられただけでも有効ですか?

解雇の意思表示自体は口頭でも法的には成立しえますが、後のトラブルを避けるため、解雇理由証明書の交付を会社に求めることができます(労働基準法22条)。

まとめ

試用期間中の解雇も、通常の解雇とほぼ同じ規制を受ける。「試用期間だから何でもあり」ではなく、合理的な理由と正しい手続きが必要だと知っておくことが、不当な解雇に流されないための備えになる。

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📌 出典:最高裁判所大法廷 昭和48年12月12日判決(三菱樹脂事件、裁判所 裁判例検索)、労働契約法16条(laws.e-gov.go.jp)、労働基準法20条・21条・22条ほか。 制度は改正されることがあります。最新の内容は厚生労働省の公表資料をご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の法律相談にはあたりません。

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