指を鳴らすとなぜ音が鳴るのか、関節が変形するというのは本当か

【衝撃】指を鳴らす音の仕組みの正体、関節への影響は60年実験で判明
🧠 人間の不思議 / 図版:タネアカシ編集部

⚡ 30秒でわかるまとめ

  • 指を鳴らす音の正体は、関節内で気泡ができる「キャビテーション」という現象。
  • 2015年のMRI研究で、気泡が「できる瞬間」に音が鳴ることが確認された(以前の通説は「潰れる音」だった)。
  • 指を鳴らす習慣と手の関節症の関係を調べた研究では、明確な関連は見つかっていない

手持ち無沙汰にポキッと指を鳴らす。あの音の正体を説明できる人は、意外と少ないのではないでしょうか。「関節が変形する」「太くなる」という言い伝えも根強くありますが、実は科学的にかなりのところまで解明されている現象です。

音の正体は関節内の「気泡」

指の関節は「関節包」という袋に包まれており、中には潤滑油の役割を果たす滑液という液体が入っています。滑液には二酸化炭素や窒素などの気体がわずかに溶け込んでいます。

指を曲げたり引っ張ったりすると、関節包の中の圧力が急激に下がります。すると溶けていた気体が耐えきれずに小さな気泡となって現れます。この現象をキャビテーションと呼び、指鳴らしの「ポキッ」という音の正体だと考えられています。

🔍 「音は気泡が潰れるとき」は誤解だった

これまでの通説できた気泡が潰れる(はじける)瞬間に「ポキッ」という音が鳴る。
2015年の研究で判明MRIのリアルタイム撮影により、気泡が「できる瞬間」に音が鳴ることが確認された。

ここが分かれ目: 長年「潰れる音」だと考えられてきましたが、実際は「生まれる音」だったという逆転の結果です。

2015年、MRIで証明された仕組み

カナダ・アルバータ大学のクワチュク氏らの研究チームは2015年、被験者の指をリアルタイムでMRI撮影しながら関節を引っ張り、音が鳴る瞬間の関節内部を観察しました。その結果、関節が離れると同時に空洞(気泡)が急速にできあがり、その瞬間に音が発生することが確認されました。

🖐 指を鳴らしたときに関節の中で起きていること

  • STEP 1指を曲げる・引っ張る関節包が引き伸ばされ、内部の容積が広がる。
  • STEP 2圧力が急激に下がる関節面どうしが離れようとして抵抗し、限界点で一気に離れる(トライボニュークリエーション)。
  • STEP 3気泡が一瞬でできる溶けていた気体が急速に気泡化し、その瞬間に「ポキッ」という音が鳴る。
  • STEP 4気泡はしばらく残るすぐには元に戻らないため、同じ指をすぐには再び鳴らせない。

出典: Kawchuk et al., "Real-Time Visualization of Joint Cavitation", PLOS ONE, 2015年掲載の研究内容をもとに当編集部が図にしたものです。

あの音は、関節が壊れる音ではない。気泡が生まれる、ほんの一瞬の音だ。

「関節が変形する」は本当か

「指を鳴らすと関節が太くなる」「関節炎になる」という話は根強いですが、これを検証した研究があります。2011年にJournal of the American Board of Family Medicine誌に発表された研究では、50〜89歳の215人を対象に、指を鳴らす習慣と手の変形性関節症の関係が調べられました。

📊 指を鳴らす習慣と、手の関節症の有病率

指を鳴らす習慣がある人調査対象のうち20%
18.1%
指を鳴らす習慣がない人
21.5%

図の見方: deWeber et al.(2011年)の研究による、いずれかの手指関節に変形性関節症が見られた割合。統計的に明確な差は認められていません(p=.548)。

数字のうえでは、むしろ習慣がある人のほうがわずかに低い結果ですが、研究者はこれを「差がある」とは結論づけていません。サンプル数の規模から見ても、「指を鳴らすと関節症になりやすい」と言い切るだけの根拠は乏しいというのが実際のところです。

60年間、片手だけ鳴らし続けた医師

この俗説をめぐっては、もっと極端な検証も存在します。アメリカの医師ドナルド・アンガー氏は、母親から「指を鳴らすと関節炎になる」と言われ続けたことに反発し、1959年から60年以上にわたって、左手の指だけを1日2回以上鳴らし続けました。

🏆 60年間の自己実験でわかったこと

18,000日以上 ドナルド・アンガー医師が左手だけ指を鳴らし続けた日数(1959年〜)

結果: 60年後、鳴らし続けた左手と、一度も鳴らさなかった右手を比較しても、関節炎の兆候に差は見られませんでした。この研究は1998年に医学誌Arthritis & Rheumatismに発表され、2009年にイグノーベル賞を受賞しています。

💬 指鳴らしにまつわる俗説

指が太くなる 関節が緩む 関節炎になる 骨が変形する 癖になると鳴らないと落ち着かない

図の見方: このうち医学的に検証され、明確な関連が確認されていないのが「関節炎になる」という説です。ほかの俗説の多くは検証されたデータが確認できていません。

指を鳴らす習慣は?

よくある質問

指を鳴らすとなぜ音が鳴るの?

関節を包む関節包の中の圧力が急激に下がり、滑液に溶けていた気体が気泡になる「キャビテーション」という現象が起きるためです。2015年にカナダの研究チームがMRIで撮影したところ、気泡が「できる瞬間」に音が鳴ることが確認されました。

指を鳴らすと関節が変形するの?

2011年に発表された研究では、指を鳴らす習慣がある人とない人で、手の変形性関節症の有病率に明確な差は見られませんでした。また60年間、片手だけ指を鳴らし続けた医師の自己実験でも、両手に差は出ませんでした。

同じ指をすぐにまた鳴らせないのはなぜ?

できた気泡が関節包の中の液体に再び溶けて元の状態に戻るまで、一定の時間がかかるためです。この間は圧力の変化が起きにくく、同じ関節を続けて鳴らすことができません。

まとめ

指を鳴らす音の正体は、関節の中でごく小さな気泡が生まれるキャビテーションという物理現象でした。長年「関節が壊れる音」と思われがちでしたが、MRI研究も自己実験も、それを裏づける結果は示していません。

ただし、鳴らした直後に痛みがある場合や、頻繁に腫れを感じる場合は、俗説とは別の話として専門家に相談したほうが安心です。

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📌 出典:Kawchuk GN, et al. "Real-Time Visualization of Joint Cavitation", PLOS ONE 10(4), 2015(journals.plos.org)、deWeber K, et al. "Knuckle Cracking and Hand Osteoarthritis", Journal of the American Board of Family Medicine 24(2), 2011(jabfm.org)、日本経済新聞「指の関節を鳴らすとなぜスッキリ?」(nikkei.com)ほか。

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