固定残業代(みなし残業)は違法か|最高裁が示した2つの条件

【要注意】固定残業代は違法?見分け方3つ
💡 答え合わせ / 図版:タネアカシ編集部

⚡ 結論だけ先に

  • 固定残業代(みなし残業代)という制度そのものは違法ではありません。ただし2つの条件を満たさないと無効になります。
  • 根拠は労働基準法37条と、最高裁・日本ケミカル事件(平成30年7月19日)が示した「対価性」「明確区分性」の判断枠組み。
  • 無効と判断されると、固定残業代分は基本給の一部とみなされ、実際の残業時間ぶんの割増賃金を別途全額払う必要が生じます。

求人票や給与明細に「固定残業代」「みなし残業代」と書かれているのを見て、それだけで「違法なブラック企業だ」と決めつける声がネット上には多い。知恵袋にも同じ質問が繰り返し立つ。だが実際には制度自体は最高裁も認めている適法な仕組みで、問題になるのは「どう運用しているか」のほうだ。

はじめに: この記事は労働基準法にもとづく一般的な説明です。実際の雇用契約書・就業規則の記載内容によって結論は変わります。個別の判断はお近くの労働基準監督署の総合労働相談コーナー、または弁護士・労働組合にご相談ください。

まず答え:固定残業代そのものは違法ではない

労働基準法37条は、時間外労働に対して割増賃金を支払うことを義務づけているだけで、支払い方法までは定めていません。あらかじめ一定時間分の残業代を固定額で払う仕組み自体は、最高裁も有効性を認めている制度です。

🔍 よくある思い込みと、実際のところ

思い込み「固定残業代」「みなし残業代」と書いてあるだけで違法・ブラック企業
実際制度自体は適法。労基法37条は支払い方法までは規定していない。問題は運用と内訳の明示の仕方
思い込み固定残業代を払っていれば、それ以上は何時間働かせても自由
実際固定分は「◯時間分」の対価にすぎず、超過分は別途、割増賃金を追加で支払う義務がある

根拠: 労働基準法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)、最高裁第一小法廷 日本ケミカル事件判決(平成30年7月19日)。

「固定残業代=違法」ではない。違法になるのは、条件を満たさないまま運用しているときだけだ。

なぜネットで意見が割れるのか

意見が割れる最大の理由は、会社ごとに運用がバラバラだからだ。同じ「固定残業代」でも、金額の内訳を明記している会社もあれば、基本給に埋め込んで曖昧にしている会社もある。後者は最高裁が示す「明確区分性」を欠き、無効と判断されやすい。

加えて2024年4月に求人票のルールが変わったばかりという事情もある。厚生労働省は職業安定法施行規則を改正し、固定残業代を採用する求人には基本給の額・固定残業代の名称と金額・超過分は別途支給する旨を明示するよう求めた。この改正前の情報のまま語っている記事や体験談も多く、答えが古いか新しいかで印象が変わってしまう。

判断の分かれ目

⚖ 有効か無効か、分かれ目はここ

ケース結論根拠・理由
雇用契約書・賃金規程に「時間外労働の対価」と明記され、金額も基本給と区別されている有効になりやすい対価性・明確区分性の両方を満たす(日本ケミカル事件の判断枠組み)
基本給の中に埋め込まれ、いくらが残業代分か本人も分からない無効になりやすい明確区分性を欠く
「役職手当」など別名目だが、実態は残業代として扱われている△要確認名称ではなく実態(対価性)で判断される
固定残業代が想定する時間が過労死ラインなど著しく長い公序良俗違反となる余地裁判例上、有効性が争われた例がある
2024年4月以降の求人で、基本給・内訳・超過分支給の3点が明示されている現行ルールに適合厚生労働省・職業安定法施行規則改正

見るところ: 「対価性(残業代として払われている実態)」と「明確区分性(金額が基本給とはっきり分かれているか)」の2つ。どちらか一方でも欠けると無効になりやすい。

求人票・給与明細で確認する手順

📝 このとおりに確認すればいい

  • STEP 1求人票・雇用契約書の記載を見る「固定残業代」の金額と、それが何時間分の時間外労働に相当するかが明記されているか確認する。
  • STEP 2給与明細で内訳を確認する基本給と固定残業代が別項目になっているか。まとめて「基本給」としか書かれていない場合は要注意。
  • STEP 3実際の残業時間と比べる想定時間を超えて働いた月に、追加の割増賃金が別途支払われているか給与明細で確認する。
  • STEP 4超過分が払われていなければ相談する会社に内訳の開示を求め、応じない・払われない場合は労働基準監督署へ。未払い分は過去にさかのぼって請求できる場合がある。

相談先: 各都道府県労働局・労働基準監督署の総合労働相談コーナー(無料)、法テラス、個人でも入れる労働組合。

自分の給与に固定残業代が含まれているか、内訳を確認したことがある?

よくある質問

固定残業代(みなし残業代)は違法ですか?

制度自体は違法ではありません。ただし最高裁・日本ケミカル事件(平成30年7月19日)が示した「対価性」(残業代として支払われている実態があるか)と「明確区分性」(基本給と区別できるか)の2条件を満たさない場合、無効と判断されることがあります。

固定残業代の時間分を超えて働いたら追加で払われますか?

はい。固定残業代はあくまで「◯時間分」の対価であり、それを超えた時間外労働については労働基準法37条にもとづき追加の割増賃金を支払う義務があります。超過分の未払いは固定残業代の有無にかかわらず違法です。

求人票に固定残業代の内訳が書かれていない場合はどうなりますか?

2024年4月の職業安定法施行規則改正により、固定残業代を採用する場合は基本給の額、固定残業代の名称・金額、超過分は別途支給する旨を求人票に明示することが厚生労働省により求められています。記載がない求人は、この点で新しいルールに沿っていない可能性があります。

まとめ

「固定残業代」という言葉だけで違法かどうかは決まらない。見るべきは、金額の内訳がはっきりしているか、そして超過分がちゃんと別払いされているかの2点だけだ。

給与明細を見て内訳が分からなければ、まず会社に聞く。それでも解消しなければ、労働基準監督署の総合労働相談コーナーは無料で相談できる。一人で抱え込む必要はない。

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📌 出典:労働基準法37条、最高裁第一小法廷 日本ケミカル事件判決(平成30年7月19日)、厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」(mhlw.go.jp)ほか。 制度は改正されることがあります。最新の内容は厚生労働省の公表資料をご確認ください。 本記事は一般的な情報提供であり、個別の法律相談にはあたりません。

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