映画の撮影は物語の順番通りに撮っていない、その理由を図解
⚡ 30秒でわかるまとめ
- 映画やドラマの撮影は、物語の順番通りには行われていないのが基本。
- 俳優のスケジュールとロケ地の移動コストを優先し、場面をグループ化してまとめて撮る「香盤撮り」が主流。
- 物語の順番に並ぶのは、撮影後の編集段階になってから。
「あの感動のラストシーンは、実は撮影の初日に撮られていた」— 映画やドラマの現場では、こうしたことが珍しくありません。物語の順番通りに撮影する「順撮り」は、実はごく一部の特別な作品でしか採用されない撮り方です。
香盤撮りが基本、順撮りは例外
映画やドラマの撮影現場では、脚本を「場所」や「出演する俳優」ごとにグループ分けした「香盤表(こうばんひょう)」と呼ばれる撮影計画表がつくられます。この表に沿って、同じロケ地・同じ俳優が登場するシーンをまとめて撮影し、物語の順番はいったん無視されます。
完成した映像が違和感なく順番通りに見えるのは、撮影後の編集(ポストプロダクション)で正しい順番につなぎ直しているからです。観客が目にする「時系列」は、現場での撮影順とはほぼ別物だと考えてよいでしょう。
🎬 脚本から公開までの流れ
- STEP 1脚本を場面ごとに分解すべてのシーンを場所・出演者・時間帯で分類する。
- STEP 2香盤表を作成同じロケ地・同じ俳優のシーンをまとめて撮影日を割り振る。
- STEP 3物語の順番を無視して撮影ラストシーンを初日に撮ることも珍しくない。
- STEP 4編集でつなぎ直す撮影素材を物語の順番に並べ替えて完成させる。
図の見方: 映像制作の実務解説をもとに、当編集部が一般的な工程を整理した概念図です。作品ごとに順序は異なります。
なぜ場面ごとにまとめて撮るのか
いちばん大きな理由は俳優のスケジュールです。人気俳優ほど複数の作品を掛け持ちしており、撮影に参加できる日数は限られています。物語の順番通りに待っていては、その俳優の出番が来るまで現場全体が止まってしまいます。
もう1つの理由はロケ地とセットのコストです。同じ場所でのシーンが物語の前半と後半に分かれていても、その場所へ機材ごと移動するのは1回にまとめたほうが効率的です。照明や美術セットの組み直しにも時間と費用がかかるため、「場所ごとにまとめて撮る」ことが撮影費を抑える基本戦略になっています。
🔍 順撮り と 香盤撮り(まとめ撮り) の違い
香盤撮り(基本)
- 場所・俳優ごとにまとめて撮影
- 移動コストと拘束日数を抑えられる
- ほとんどの商業映画・ドラマで採用
順撮り(例外)
- 物語の順番通りに撮影する
- 俳優の体型変化・感情の積み重ねを自然に描ける
- コストと日程の制約が大きく採用は限定的
図の見方: 映像制作の解説記事をもとに当編集部が整理した一般的な傾向です。作品ごとの事情で例外は多くあります。
観客が見る「時系列」と、現場が撮った「撮影順」は、ほぼ別物として作られている。
順撮りがあえて選ばれる特別なケース
とはいえ、順撮りが完全に無くなったわけではありません。子役の成長をそのまま画面に映したい作品や、俳優の心情の変化を積み重ねて演じさせたい作品では、コスト増を承知のうえで順撮りが選ばれることがあります。
季節の移り変わりを描く作品で、実際の季節の変化に合わせて長期間かけて撮影するケースも同様です。「贅沢な撮り方」と言われるゆえんは、ここにあります。
🗂 撮影現場でよく使われる用語
図の見方: 撮影現場で使われる代表的な用語です。呼び方は制作会社によって多少異なります。
役者に求められる技術
撮影順がバラバラということは、役者はその日撮る場面が「物語のどの時点で、どんな感情の状態か」を、自分で把握し直しながら演じているということです。ラストシーンの号泣を初日に演じ、翌日には物語序盤の何気ない笑顔を演じる、といったことが日常的に起こります。
台本の前後関係を頭に入れたうえで、その日だけ「その感情」を再現する集中力が必要になるため、経験を積んだ役者ほど撮影順への対応力が高いと言われています。
🎭 香盤撮りが役者に要求する負担度
図の見方: 実測データではなく、映像制作の解説をもとに当編集部が整理した相対的な目安です。
映画の撮影が順番通りじゃないと知って、意外だった?
よくある質問
映画の撮影はなぜ物語の順番通りに撮らないの?
俳優のスケジュールが限られていることと、ロケ地や照明のセッティングを何度もやり直すコストを避けるためです。脚本を「場所」や「出演者」ごとにグループ分けし、まとめて撮影してから編集で物語の順番に並べ直しています。
物語の順番通りに撮る「順撮り」はまったく行われないの?
行われることもあります。子役の成長を写す作品や、俳優の心情の変化を積み重ねたい一部の作品では、コストが増えるのを承知のうえで順撮りが選ばれます。ただし予算と日程の制約が大きいため、商業作品では例外的な手法です。
撮影順がバラバラだと、役者はどう演技しているの?
その場面が物語のどの時点で、どんな感情の状態かを役者自身が把握し直しながら演じています。台本の前後関係を頭に入れ、その日だけ「その感情」を再現する技術が必要になるため、経験や準備の差が出やすい部分です。
まとめ
映画やドラマの撮影は、物語の順番ではなく「場所」と「俳優」の都合でまとめて行われるのが基本です。観客が見る滑らかな時系列は、撮影後の編集作業によってはじめて生まれています。
次に映画を見るときは、「このシーンとあのシーン、実は同じ日に撮られたのかもしれない」と想像してみると、また違った楽しみ方ができるはずです。
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📌 出典:MVG博物館「『順撮り』と『中抜き』どちらで撮る?」(mvg-museum.sakura.ne.jp)ほか映像制作の実務解説記事。



