同じ内閣なのに支持率が20ポイント以上違う。内閣支持率はなぜ各社で違うのか、調査方法から読み解く

内閣支持率はなぜ違う?毎日41%とFNN62%の差
✒ コラム / 図版:タネアカシ編集部

高市内閣の支持率が、この3週間で次々と発表された。毎日新聞41%、読売新聞57%、日本経済新聞58%、NHK53%、TBS系JNN59.2%、フジテレビ系FNN62.5%。同じ内閣を、ほぼ同じ時期に尋ねているのに、いちばん低い数字といちばん高い数字のあいだには21ポイント以上の開きがある。SNSでは「どこかの社が数字を作っているのでは」という声も出ている。だが実際に起きているのは、もっと地味で、もっと確認できる話だ。

同じ内閣なのに、なぜ20ポイント以上も違うのか

まず、実際に出た数字を並べる。いずれも高市内閣を対象にした、2026年7月中旬から8月上旬にかけての調査だ。

  • 毎日新聞(7月18〜19日実施、社会調査研究センター「dサーベイ」方式):41%(前回51%から10ポイント下落。不支持44%が支持を初めて上回った)
  • 読売新聞(7月24〜26日実施):57%(前回69%から12ポイント下落。不支持34%)
  • 日本経済新聞・テレビ東京(7月24〜26日実施):58%(前回68%から10ポイント下落。無党派層では不支持51%)
  • 共同通信:53.7%
  • NHK(8月調査):53%(前月比5ポイント減。不支持33%は6ポイント増)
  • JNN(TBS系)(8月1〜2日実施):59.2%(前回から6.7ポイント減。政権発足以来初めて6割を切った)
  • FNN(フジテレビ系)(8月調査):62.5%(ほぼ横ばい)

ここでのJNNはTBSテレビ系列、FNNはフジテレビ系列が実施する世論調査の名称で、いずれも新聞社とは別に、放送局が独自に電話調査を行っている。つまり毎日・読売・日経という新聞社の調査と、NHK・JNN・FNNという放送局系の調査、そして共同通信という通信社の調査が、それぞれ別の設計で走っている状態だ。

いちばん低い毎日新聞の41%と、いちばん高いFNNの62.5%を比べると、その差は21.5ポイント。同じ「高市内閣」という対象を、おおむね近い時期に聞いた数字とは思えないほどの開きだ。国政選挙の当落を左右しかねない規模の差である。

この振れ幅の大きさが、SNSで「意図的な操作があるのでは」という受け止めを広げている。だが結論を先に言うと、各社の数字はそれぞれ別の「ものさし」で測られている。ものさしが違えば、同じものを測っても出てくる数字が変わるのは、むしろ自然なことだ。

付け加えておくと、内閣支持率が調査会社ごとにばらつくこと自体は、今回の高市内閣に限った出来事ではない。歴代の内閣でも、同じ月に発表された支持率が社によって10ポイント前後ずれることは珍しくなかった。それでも今回は、その差が21.5ポイントという、通常より一段大きな幅にまで広がっている点が特徴的だ。

数字が割れる本当の理由

数字の差を生んでいる要因は、大きく分けて二つある。

一つ目は、調査そのものの方法が違うこと。読売・日経・NHK・JNNなど多くの社は、電話番号を無作為に生成して固定電話と携帯電話にかける「RDD方式」の電話調査を続けている。一方で毎日新聞は、出資する社会調査研究センターがNTTドコモと組んだ「dサーベイ」というインターネット調査を採用している。dサーベイは、個人情報の第三者提供に同意した「dポイントクラブ」会員(約5640万人)の中から対象者を無作為に抽出し、ドコモのメッセージサービスで調査への協力を依頼し、スマートフォンで回答してもらう仕組みだ。

知らない番号からの電話に出て、その場で政治の質問に答える人と、スマホの通知から自分のペースで回答する人とでは、そもそも回答してくれる層の年齢構成や政治への関心度合いが異なりやすい。方式そのものが違えば、同じ質問をしても違う集団の意見を拾うことになる。

数字が低い社が意図的に下げているのではない。誰に、どう聞くかが違うだけだ。

二つ目は、質問の聞き方だ。「支持しますか、しませんか」と尋ねて、その場で答えられない人が一定数出てくる。この「わからない」層に対して、「では、どちらかと言えばどちらですか」と重ねて尋ねる社と、重ねずに一問で切り上げる社がある。重ねて尋ねると、あいまいな態度の人が「支持」か「不支持」のどちらかに寄りやすくなるとされ、これが社ごとの数字の水準差につながると、複数の政治分析の専門家が指摘している。

つまり、「今回の内閣、支持しますか」という同じ一文の質問でも、その前後にどんな設計が組まれているかで、出てくる割合は変わる。これは世論調査という手法そのものが抱える性質であって、今回の高市内閣に限った話ではない。

ここで、単純な誤差についても触れておきたい。一般的な電話RDD調査で回答者が1000人程度の場合、比率の統計的な誤差はおおむね±3ポイント前後とされる。同じ方法・同じ日に2回調査しても、誤差の範囲だけで数ポイントは動きうる、ということだ。ただし、今回のような21.5ポイントの差は、この誤差だけでは説明がつかない大きさであり、方法と時期の違いを合わせて考える必要がある。

もうひとつの見落とし、「聞いた日」のズレ

方法の違いに加えて、見落とされがちな要因がもう一つある。各社の調査日そのものが、2週間以上ずれているという点だ。

  • 毎日新聞:7月18〜19日
  • 読売・日経:7月24〜26日
  • JNN:8月1〜2日
  • NHK・FNN:8月上旬〜中旬

この約3週間のあいだに、政権をめぐる出来事は一つではなかった。食料品の消費税を実質的に引き下げる1%への税率変更が閣議決定され、皇室典範改正をめぐる政府の説明のあり方に不満が広がり、内閣改造の検討が報じられるなど、世論が動きうる材料が次々と重なっている。

つまり、私たちは「同じ高市内閣」を測ったつもりで7つの数字を並べているが、厳密には「7月18日時点の内閣」「7月25日時点の内閣」「8月1日時点の内閣」という、微妙に違う時点のスナップショットを並べていることになる。方法の違いだけでなく、この時間差も、数字が単純比較できない理由の一つだ。

実際、JNNの8月1〜2日調査では、政府が表明した食料品の消費税を1%に引き下げる方針そのものへの「賛成」は52%に上った一方で、皇室典範改正をめぐる政府の説明については「不満」とする回答が6割を超えたとされる。個別の政策への賛否と、内閣全体への支持・不支持は、必ずしも同じ方向を向くとは限らない。調査の時期によって、どちらの話題がより強く回答者の頭にあったかも、数字を左右する要因になる。

「結局どれかが操作しているのでは」への反論

ここまでの説明に対しては、当然、強い反論がある。自分で書いておく。

「方法や時期が違うと言うが、それにしても21ポイントは開きすぎではないか。支持率が高く出る社は政権寄り、低く出る社は反政権寄りに、都合よく数字を作っているのではないか」。この見方はSNSで根強く、実際に「支持率操作」という言葉が独り歩きするほど一般的だ。数字だけを見れば、疑いたくなる気持ちも理解できる。

それでも、私たちはこう考える。操作ではなく方法の違いだと考えるべき根拠が、少なくとも二つある。

一つ目は、各社の推移の向きがすべて一致しているという事実だ。毎日・読売・日経・NHK・JNNのいずれも、前回調査からの変化は「下落」で揃っている。もし各社が思い思いの方向に数字を作っているなら、上げる社と下げる社に分かれてもおかしくないが、そうはなっていない。絶対値は違っても、「支持率が下がっている」という向きだけは、方法の違う7つの調査すべてが一致して示している。

二つ目は、方法の違いによる数字のズレは、統計的にすでに説明がついていることだ。電話に出て即答する集団と、スマホでじっくり回答する集団とでは、年代構成や支持政党の分布に差が出ることは、世論調査の研究でも指摘されてきた性質であり、高市内閣に限って急に現れた現象ではない。個社の政治的立場を持ち出さなくても、調査設計の違いだけで、今回程度の開きは十分に起こりうる。

三つ目は、世論調査は選挙のたびに、実際の投票結果という「答え合わせ」にさらされ続けているという点だ。各社は選挙前の情勢調査でも同じ調査網を使っており、恣意的に数字を作れば、実際の当落との乖離という形で早晩表に出る。長年にわたって主要各社が調査を継続できているのは、こうした外部からの検証に耐えてきたからでもある。

補足: 本稿は、どの社の数字が「正しい」かを判定するものではありません。各社が公表している調査日・調査方法・サンプル数などの概要をもとに、数字が異なる仕組みを整理したものです。個別の調査結果の解釈や、内閣の評価そのものについては、読者ご自身の判断に委ねます。

内閣支持率のニュースを見るとき、あなたはどうしていますか?

よくある質問

内閣支持率はなぜ調査会社によって違うのですか?

主な理由は「聞き方」と「調査方法」の違いです。支持か不支持かをすぐに答えられない人への聞き方(重ねて尋ねるかどうか)や、電話RDD調査かインターネット調査(dサーベイなど)かといった調査方法の違いが、数字に反映されます。同じ内閣を調べていても、聞き方が違えば出てくる数字は変わります。

いちばん正しい支持率はどれですか?

「これが正解」と断定できる一社はありません。専門家は、各社の支持率の絶対値そのものより、同じ調査を継続して見たときの上昇・下落という「推移」を見ることを勧めています。今回は毎日・読売・日経・NHK・JNNのいずれも前回調査から下落しており、絶対値は違っても方向性は一致しています。

世論調査は意図的に操作されているのですか?

特定の社が数字を意図的に操作しているという根拠は確認されていません。数字の差は、質問文の言い回しやサンプルの取り方といった調査設計の違いによって、統計的に説明できるとされています。

まとめ

内閣支持率が各社でバラバラに出るのは、今回に限った話でも、高市内閣に限った話でもない。誰に、どうやって、どう尋ねたかという設計の違いが、そのまま数字の違いになって表れているだけだ。

次に「支持率〇%」というニュースを見たときは、その1社の数字だけで一喜一憂する前に、他の社の数字とどれくらい離れているか、そして前回からどちらに動いたかを確認してみてほしい。1社の絶対値より、複数社が揃って示す「向き」のほうが、ずっと多くを語っている。

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