モームリ前社長らに有罪判決、なぜ弁護士法違反に問われたのか

【物議】モームリ判決で退職代行に激震、紹介料174人分
📰 時事・社会 / 図版:タネアカシ編集部

⚡ 30秒でわかるまとめ

  • 退職代行「モームリ」を運営していたアルバトロス社の前社長・谷本慎二被告らに、東京地裁が有罪判決を言い渡しました。
  • 174人の退職希望者を、弁護士資格がないのに有償で弁護士へあっせんした「非弁提携」が弁護士法違反にあたるとされました。
  • 会社側は「あっせん料の受け取りが問題であり、退職代行サービス自体が違法とされたわけではない」としてサービスを継続しています。

📌 出典: 日本経済新聞ITmedia NEWSYahoo!ニュース(SPA!配信)東京商工リサーチほか。 本文中の解説・論点整理は当サイトが独自に執筆しています。

何があったのか

2026年8月28日、東京地裁は退職代行「モームリ」を運営していたアルバトロス社の前社長・谷本慎二被告(37)に懲役2年・執行猶予3年、元執行役員で妻の志織被告(32)に懲役1年6月・執行猶予3年、法人としての同社にも罰金200万円を言い渡しました。

両被告は2023年6月から2025年2月にかけて、弁護士資格を持たないまま174人の退職希望者を有償で弁護士2人にあっせんしていたとされ、弁護士法違反(非弁護士との提携・非弁提携)にあたると認定されました。1人あたり1万6500円の紹介料を弁護士側から受け取り、総額は約280万円にのぼったと報じられています。

これまでの経緯

  • 2023年6月〜2025年2月退職希望者を有償で弁護士にあっせんする行為が継続的に行われる。
  • 2026年2月前社長・谷本被告と妻の志織被告が弁護士法違反の疑いで逮捕される。
  • 2026年公判谷本被告は公判で「安易な気持ちだった」と当時の判断を振り返る。
  • 2026年8月28日東京地裁が両被告に有罪判決。裁判長は「弁護士制度の公正円滑な維持運営に影響を与えかねない大規模かつ職業的な犯行」と指摘。
  • 判決後モームリ側は「サービス自体への判断ではない」として運営継続を表明。

📊 何が違法だったのか

174人有償であっせんされた退職希望者の数
1.65万円弁護士側から受け取った1人あたりの紹介料
約280万円受け取った紹介料の総額

図の見方: 弁護士法では、弁護士資格のない者が報酬目的で法律事務のあっせんを行うことを禁じています。退職代行サービス自体が違法なのではなく、「弁護士に案件を紹介して謝礼を受け取る」構造が違法とされた点がこの事件の核心です。

退職代行サービスをめぐっては、会社側との「言った・言わない」の交渉や有給消化の調整など、法律行為に踏み込みかねない場面が少なくありません。民間業者が対応できるのは意思表示の伝達までで、交渉が必要な案件は弁護士や労働組合に引き継ぐのが本来のルールです。モームリはこの引き継ぎの過程で、弁護士から謝礼を受け取っていたことが問題視されました。

賛否が割れているポイント

👍 判決を妥当とする主張

  • 弁護士法は依頼者の利益より紹介料が優先される「利益相反」を防ぐための規定であり、原則どおりの判断だとする声
  • 退職代行業者が急増するなかで、無資格のまま法律事務に踏み込む業者への警鐘として必要だったとする声
  • 174人・約280万円という規模は「うっかり」では説明できず、組織的な仕組みだったとする指摘

👎 判決に疑問を呈する主張

  • 他業界では一般的な「紹介料」の慣行が、弁護士業界だけ厳しく罰せられるのは不均衡だとする声
  • 利用者自身に実害が生じたわけではなく、退職代行サービスの成長を狙い撃ちした「見せしめ」ではないかとする弁護士のコメント
  • 制度への理解が追いつかないまま急拡大した業界全体の構造問題を、一企業の刑事責任だけに帰着させるのは酷だとする声

モームリ前社長らへの有罪判決、あなたはどう思う?

なぜここまで伸びたのか

この判決が注目されたのは、「退職代行を使ったら自分にも火の粉が飛ぶのでは」という利用者側の不安を直撃したからです。退職代行はここ数年で20代を中心に定着したサービスですが、その裏側の仕組みまで理解して使っている人はほとんどいません。「もしかして自分が使った業者も同じことをしていたら」という想像が、他人事ではない拡散力を生みました。

もう一つの軸は、業界の急拡大そのものへの不信感です。東京商工リサーチの調査では、退職代行を事業として掲げる企業(法律事務所を除く)は56社にのぼり、うち32社が2025年設立とされています。ブームに乗って参入した事業者が、法律の境界線をどこまで理解していたのかという疑念が、今回の一社の事件をきっかけに業界全体へ広がった格好です。

補足: 今回の有罪判決は「弁護士への有償あっせん」という行為に対するものであり、退職代行サービスを利用すること自体や、他の退職代行業者の適法性を直接否定するものではありません。モームリは判決後も通常どおりサービスを継続していると報じられています。個別の退職代行業者が弁護士法に抵触しているかどうかは、本記事だけでは判断できません。

まとめ

モームリ前社長らへの有罪判決は、退職代行という新しい業態が抱えていた「どこまでが伝達で、どこからが法律事務か」という境界線を、刑事事件として初めて可視化しました。退職代行がなぜここまで急増したのかという背景とあわせて見ると、便利さの裏にあるリスクが見えてきます。業界の淘汰が進むのか、今後の各社の対応が焦点です。

▶ 次に読む 📰 時事・社会 物議トイザらスがセーラームーングッズに酷似、販売中止 トイザらスの新商品「マジックネックレス」が、セーラームーンのグッズに酷似していると指摘され話題です。中国の卸売サイトに酷似品があるとの指摘もあり、トイザらスは販売を一時見合わせ事実確認を進めています。経緯と論点を整理します。

🔗 あわせて読みたい