お盆帰省「予定なし」が過去最多41.3%。親が先に言い出した本当の理由
「今年は帰ってこなくていいから」。そう言われて拍子抜けした人が、この夏は少なくないかもしれません。マイナビニュースが2026年8月12日に報じた調査では、お盆に帰省する「予定がない」人が41.3%となり、「予定がある」の33.0%を上回って過去最多になりました。多くの記事は、この数字を「家族の絆が薄れた証拠」として扱います。しかし祖父母世代を対象にした別の調査を重ねると、まったく違う風景が見えてきます。
記録的な「帰省予定なし」41.3%が意味すること
マイナビニュースが2026年8月12日に掲載した会員アンケートによれば、今年のお盆に「帰省する予定がある」と答えた人は33.0%にとどまり、「帰省も家族や親族を迎える予定もない」と答えた人が41.3%で最も多い回答になりました。帰省する人より、帰省しない・迎えない人のほうが多いという、これまでにない結果です。
背景には、コロナ禍に帰省を控える年末年始やお盆を経験した人が多いことがあります。一度「帰らなくても何とかなった」という経験を持ってしまうと、「毎年必ず帰らなくてもいいのでは」という空気が生まれやすくなります。加えて近年は、夫婦がそれぞれ自分の実家へ別々に帰る「セパレート帰省」や、義理の実家への帰省をやめる「帰省じまい」といった言葉も広がっています。共働き夫婦が休みを合わせにくくなったことに加え、我慢して合わせていた慣習を見直す動きが進んでいるためだと見られています。
マイナビニュースは同年7月にも別の会員調査を報じており、そこでも「予定なし」が47.1%と最多になっていました。調査時期やサンプルは異なるため単純に並べて増減を語ることはできませんが、少なくとも今年のお盆については、複数の独立した調査が同じ方向を指しています。一時的な誤差ではなく、傾向として定着しつつあると見てよさそうです。
祖父母の45.7%が「来てほしくない」と答えていた
「帰省しない子どもが冷たい」という見方は根強くあります。しかし、迎える側の本音を調べた調査を見ると、話はそう単純ではありません。プレジデントオンラインが報じた記事によれば、孫の世代では73.5%が「祖父母の家に帰省したい」と考えている一方、祖父母の世代で「孫に帰省してほしい」と答えたのは54.3%にとどまり、45.7%が「してほしくない」と回答したといいます。会いたい気持ちが強いのは、実は孫の側なのです。
同記事では、神戸学院大学の鈴木洋仁准教授が、この「孫疲れ」と呼ばれる現象の背景に日本社会の構造変化があると指摘しています。さらに西南学院大学の研究として紹介されている内容では、孫の存在が祖父母の幸福度にとって必ずしもプラスに働くわけではなく、母方の祖母の幸福度は父方の祖母と比べて13.3%低いことも示されています。孫の世話が性別役割分業によって母方の祖母に偏りやすいことが要因とされています。
帰らなくなったのではない。帰らなくていいと、先に言われただけだ。
つまり「来てほしくない」と最初に言葉にできたのは、祖父母の世代でした。年齢を重ね、体力的な負担への自覚があること、そして「孫が可愛くない」という誤解を招きかねない発言を、社会的な立場としてある程度許容されやすい世代であることが影響しているのかもしれません。
子どもの側にも、実は同じ本音がずっとあった
ここからが、この記事でいちばん伝えたいことです。「帰省予定なし」が過去最多になった理由を、祖父母側の本音だけで説明するのは不十分だと考えます。ソニー損害保険が2026年6月に実施した調査(有効回答1,000名)によれば、車で帰省する場合の費用は平均2.4万円、移動時間が6時間以上のケースでは6.6万円に上ります。同社の発表では、帰省の楽しみとして「家族との会話」が挙がる一方、ストレスの要因として「親戚への気遣い」が挙げられています。
時間、お金、気疲れ。子どもの側にも、帰省を負担に感じる材料はもともと十分にありました。それでも長い間、口には出しにくいものでした。「実家に帰りたくない」と言えば、親不孝だと受け取られかねないからです。義務感で帰省し、気を遣いながら数日を過ごし、また日常に戻る。そのサイクルを、多くの人が本音を隠したまま続けてきました。
状況が動いたのは、先に「来なくていい」と言い出す側が現れたからです。親や祖父母がそう口にした瞬間、子どもは自分の本音を後ろめたさなく認められるようになります。「セパレート帰省」や「帰省じまい」が広がっているのも、同じ構造の別の表れだと見ることができます。夫婦のどちらかが我慢して合わせていた慣習を、双方が言葉にして調整し始めただけです。41.3%という数字は、家族への関心が薄れた結果というより、長年ずれていた本音の告白の順番が、ようやく双方でそろった結果に近いと、私たちは見ています。
「帰省じまい」がとりわけ妻の側から義理の実家に対して先に切り出されやすいことも、この見方を裏付けます。義理の親との関係は、実の親との関係よりも「気を遣うのが当然」という圧力が強く働きやすく、本音を言い出すハードルも高いものでした。それでも近年、切り出す人が増えているのは、周囲に同じ選択をする人が増え、「言ってもいいのだ」という前例が積み上がってきたからだと考えられます。本音そのものは以前から存在し、それを言葉にする社会的な許可のほうが、後から追いついてきたということです。
「家族の絆が壊れているだけでは」という反論への回答
この見方に対しては、当然強い反論があります。いちばん強いものを、自分で書いておきます。
「それは単なる家族の希薄化であり、美化すべきではない」。特に高齢の親を一人にする社会的孤立のリスクを軽視しているのではないか、という指摘です。「来なくていい」という言葉を額面通りに受け取って足を運ばなくなれば、実際に会う頻度は減ります。高齢者の孤立は健康状態の異変に気づく機会を減らす、現実的な問題です。この批判は筋が通っています。
それでも私たちは、こう考えます。義務感で顔を出すだけの帰省は、本人が思うほど相手の孤立を防いでいません。気を遣い合いながら短時間を過ごし、双方が疲れて解散する関係より、電話やビデオ通話で頻度を保ちながら、会うときは互いが望むタイミングで会う関係のほうが、実質的なつながりは維持しやすいという見方もできます。事実、孫の73.5%は「帰省したい」という気持ち自体は失っていません。減っているのは義務としての回数であって、会いたい気持ちそのものではないのです。
もちろん、これは「帰省しなくてよい」という結論を無条件に支持するものではありません。孤立のリスクは、本人が「大丈夫」と言っているかどうかとは別に存在します。とくに一人暮らしの高齢の親については、帰省の頻度が減った分を、電話や短い訪問といった別の手段で補う意識が欠かせません。義務としての年中行事を減らすことと、安否を気にかける頻度を減らすことは、本来イコールではないはずです。
あなたは今年のお盆、実家に帰省しますか?
よくある質問
お盆に帰省しない人はどれくらいいますか?
マイナビニュースが2026年8月12日に報じた会員アンケートでは、お盆に帰省の「予定がない」人が41.3%で、「予定がある」の33.0%を上回り過去最多になりました。帰省も来客の予定もない人が、帰省する人より多い状況です。
「孫疲れ」とは何ですか?
孫の帰省を嬉しく思う一方で、世話や気遣いによって祖父母側が疲れてしまう現象を指す言葉です。ある調査では孫の73.5%が祖父母の家に帰省したいと答えた一方、祖父母側で「帰省してほしい」と答えたのは54.3%にとどまり、45.7%が「してほしくない」と回答したと報じられています。
セパレート帰省とは何ですか?
夫婦がそれぞれ自分の実家に別々に帰省するスタイルです。共働き夫婦の増加で休みを合わせにくくなったことや、コロナ禍を経て「毎年必ず帰らなくてもいい」という意識が広がったことが、増加の背景として挙げられています。
まとめ
「帰省予定なし」が過去最多になったというニュースは、家族が冷え込んだという物語で読まれがちです。しかし数字を重ねてみると、会いたい気持ちを失っていない孫の世代と、疲れを言葉にできるようになった祖父母の世代が、ようやく同じテーブルで本音を交換し始めた過程のようにも見えます。
今年、実家から「来なくていい」と言われたなら、それは見放された合図ではなく、長年言えなかった本音に、ようやく順番が回ってきただけかもしれません。帰らない年があっても、電話の一本で、その本音はまだつながります。
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📌 出典: マイナビニュース、 PRESIDENT Online(Yahoo!ニュース配信)、 ソニー損害保険株式会社、 マイナビウエディングJOURNAL。 解釈と考察は当サイトが独自に執筆しています。



