交通事故の過失割合は誰が決めるのか、警察ではない理由

【意外】交通事故の過失割合、決めるのは警察じゃない
💡 答え合わせ / 図版:タネアカシ編集部

⚡ 結論だけ先に

  • 過失割合を決めているのは警察ではなく、当事者双方の保険会社どうしの示談交渉です。
  • 交渉の基準になるのは「別冊判例タイムズ38号」という、裁判官らが事故類型別にまとめた一覧表。
  • 話し合いがまとまらなければ、ADR(裁判外紛争解決)や裁判所が最終的に判断します。

交通事故のあと、多くの人が「警察が過失割合を決めてくれる」と思い込んでいます。しかし実際に警察が作るのは、事故の状況を記録した「実況見分調書」だけで、そこに割合の数字は一切書かれていません。では「7対3」「8対2」というあの数字は、誰がどうやって出しているのか。知恵袋にも「提示された割合に納得できない」という相談が絶えないこの疑問を、一次資料から整理します。

はじめに: この記事は民事交通訴訟の一般的な実務にもとづく一般的な説明です。個別の事故の状況によって結論は変わります。実際の交渉・請求については弁護士や交通事故紛争処理センターなどの専門窓口にご相談ください。

まず答え:決めているのは保険会社どうしの交渉

過失割合とは、事故の原因が当事者双方にどれだけあったかを示す割合です。この数字を最初に提示し、話し合って決めているのは、加害者側と被害者側、それぞれの任意保険会社の担当者です。警察はこの交渉には加わりません。「民事不介入の原則」により、当事者間の損害賠償という民事上の争いに、捜査機関である警察は立ち入らない建前になっているためです。

🔍 よくある思い込みと、実際のところ

思い込み警察が事故現場に来て、過失割合を決めてくれる
実際警察は民事不介入の原則により過失割合の決定には関与しない。作成するのは、事故の状況を記録した実況見分調書という事実の記録のみ
思い込み実況見分調書に「7:3」のような割合の数字が書かれている
実際調書に割合の数字は記載されない。割合は、その調書をもとに保険会社どうしが話し合って決める
思い込み過失割合は法律で決まった数値がある
実際法律上、決まった数値表は存在しない。実務では「別冊判例タイムズ38号」という裁判官らがまとめた目安表が使われる

根拠: 東京地裁民事交通訴訟研究会編「別冊判例タイムズ38号」/民事不介入の原則

過失割合の数字は、警察ではなく保険会社の交渉で決まる。

なぜ「警察が決める」と誤解されるのか

誤解の理由ははっきりしています。事故直後に現場へ来て、当事者から話を聞き、書類を作るのが警察だからです。「調べてくれた=判断してくれた」と受け取ってしまうのは自然な流れですが、実況見分調書はあくまで位置関係や速度、信号の状況といった客観的な事実の記録にとどまります。

しかもこの調書は、事故を目撃していない警察官が、当事者の説明をもとに作る書類です。片方の言い分だけを強く聞いてしまうと、記録自体が一方に偏ることもあるとされています。だからこそ、自分の記憶と食い違う記述があれば、その場で訂正を求めることが重要になります。

何を基準に交渉しているのか

保険会社の担当者が交渉のたたき台にしているのが、「別冊判例タイムズ38号」という書籍です。東京地方裁判所の交通事故専門部の裁判官らが、過去の裁判例をもとに事故のパターンを338通り以上に分類し、それぞれの「基本過失割合」を図解つきで示しています。

⚖ 状況ごとの決め方の分かれ目

状況決め方使われる基準
双方が任意保険に加入し、示談で交渉保険会社どうしの話し合い別冊判例タイムズが目安
話し合いがまとまらないADR(裁判外紛争解決)弁護士など第三者が仲介
ADRでも折り合わない、金額が大きい民事訴訟裁判所が判決で確定
相手が任意保険に未加入当事者どうしの直接交渉基準表はあるが強制力なし

見るところ: 基本の過失割合に対して、信号の色・徐行の有無・一時停止の違反などの「修正要素」が加算・減算される。同じ「追突事故」でも状況次第で数字は変わる。

納得できないときはどう動けばいいか

提示された割合に納得がいかないとき、感情的に拒否するだけでは進みません。やることの順番は決まっています。

📝 このとおりに動けばいい

  • STEP 1提示の根拠を聞くどの事故類型に当てはめ、どんな修正要素を使ったのかを担当者に確認する。
  • STEP 2自分でも照らし合わせる別冊判例タイムズの該当類型を確認するか、弁護士の無料相談(初回30分程度)を利用する。
  • STEP 3折り合わなければADRに申し立てる交通事故紛争処理センターなどは無料で使えることが多く、専門の相談員が間に入ってくれる。

相談先: 日弁連交通事故相談センター/公益財団法人交通事故紛争処理センター/事件性がある場合は警察相談専用電話#9110

過失割合、警察が決めていると思っていた?

よくある質問

過失割合は警察が決めているのですか?

いいえ。警察は実況見分調書という事実の記録を作成するだけで、割合の数字自体は記載しません。過失割合は、その記録をもとに加害者側・被害者側の保険会社が話し合って決めます。

過失割合の基準になる数字表はどこにありますか?

実務で広く使われているのは、東京地方裁判所の裁判官らがまとめた「別冊判例タイムズ38号」という書籍です。事故の類型ごとに基本の過失割合と、状況に応じた修正要素が示されています。

提示された過失割合に納得できないときはどうすればいいですか?

まずは提示の根拠を保険会社に確認し、必要なら弁護士に相談します。それでも折り合わない場合は、公益財団法人交通事故紛争処理センターなどの無料のADR(裁判外紛争解決)を利用できます。

まとめ

過失割合をめぐる誤解の多くは、「警察=判断する人」という思い込みから生まれています。実際に数字を決めているのは保険会社どうしの交渉であり、その土台になるのは別冊判例タイムズという民間の基準書です。提示された数字を鵜呑みにせず、根拠を聞く。それだけで交渉の見え方は変わります。

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📌 出典:東京地裁民事交通訴訟研究会編「別冊判例タイムズ38号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」、日弁連交通事故相談センター(n-tacc.or.jp)、公益財団法人交通事故紛争処理センター(jcstad.or.jp)ほか。 実際の過失割合は個別の事故状況によって異なります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の法律相談にはあたりません。

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