Z世代論はなぜ終わらないのか、最年長30歳が突きつけた矛盾

Z世代論、最年長30歳でも終わらない理由
✒ コラム / 図版:タネアカシ編集部

「Z世代は◯◯だ」という記事を、今日もどこかで誰かが読んでいます。タイパ、コスパ、推し活、静かな退職——語られる中身は年ごとに入れ替わりながら、Z世代論という形式そのものは一向になくなりません。ところが2026年、この言葉が指す集団の最年長層は、早ければ30歳に達しています。中学生と30歳の社会人を、同じ一つの言葉でくくり続けられるのはなぜでしょうか。

いま、「Z世代論」が矛盾を抱えている

2026年、「Z世代」という言葉をめぐって、奇妙なことが起きています。ニッセイ基礎研究所の廣瀬涼氏は、この言葉が指す最年長層がすでに30歳に達し、組織を支える立場に立っていると指摘しました。一方で同じ「Z世代」には、まだ中学生の年齢の子どもたちも含まれています。

海外で広く参照されるピュー・リサーチ・センターの定義では、Z世代は1997年から2012年生まれとされています。2026年の時点に当てはめると、上は20代後半、下は10代前半まで、実に15年以上の幅があることになります。国内の解説記事では1996年生まれを起点にするものもあり、区切り方によってはニッセイ基礎研究所の指摘どおり最年長が30歳に達しているとする見方も成り立ちます。

先にお断りします。 「Z世代」の生まれ年の区切りには複数の定義があり、本稿では代表的な数字として上記を採用しています。以下で述べる「Z世代論」そのものへの見方は、当サイトが独自にまとめた解釈です。

📌 出典: ニッセイ基礎研究所「2026年『Z世代』が30歳に―Z世代論は誰を守ってきたのか」Pew Research Center日経BOOKプラス(舟津昌平氏インタビュー)。 解釈と考察は当サイトが独自に執筆しています。

日本経済新聞も、Z世代をめぐる語られ方について複数の識者に取材し、その関心の高さと解釈の割れ方を「百家争鳴」と表現しました。専門家の間でさえ一致した見解がないテーマが、なぜこれほど繰り返し語られるのか。この問いこそが、本稿の出発点です。

実は、専門家どうしでも「Z世代」が指す範囲は一致していません。サイバーエージェント次世代生活研究所が2025年に実施した調査では、Z世代を17〜28歳と区切っています。ピュー・リサーチ・センターの定義を2026年に当てはめた場合の14〜29歳とも、ニッセイ基礎研究所が指摘する「最年長30歳」とも微妙にずれています。同じ「Z世代」という言葉を使いながら、それが指す範囲は語り手によって変わる——この時点で、すでに厳密な議論の土台としては心もとないのです。

なぜ16年近い幅を一つの言葉で語れてしまうのか

まず確認しておきたいのは、「Z世代」という区分そのものの粗さです。同じ年に生まれても、育った地域、家庭の経済状況、進学した学校によって価値観はまったく異なります。まして15年以上の幅を持つ集団となれば、中学生と30歳の会社員を同じ物差しで測ること自体に無理があります。

それでも「Z世代は〜」という語り口が絶えないのは、単純にそのほうが記事や企画として成立しやすいからです。「10代・20代の一部にはこういう傾向も見られる」という慎重な書き方より、「Z世代は◯◯だ」と言い切ったほうが見出しになり、企画が通り、商品コンセプトが固まります。

  • メディアにとっては、毎年テーマを更新できる便利な連載枠になる
  • 企業にとっては、若年層向け商品の企画会議で説明しやすい「共通言語」になる
  • 上の世代にとっては、自分と違う価値観をひとまとめに理解した気になれる

つまりZ世代論は、若者自身の実態を精密に描くための道具というより、語る側の都合に合わせて作られてきた枠組みという側面を強く持っています。

この構造を裏づけるように、Z世代だけを専門に調べる研究部門が、複数の企業内に常設されています。プリントシール機大手フリューは女子高生・大学生を追う「GIRLS'TREND研究所」を、サイバーエージェントは「次世代生活研究所」を持ち、それぞれ定期的にZ世代のSNS利用率や消費傾向を発表しています。日本経済新聞は、これらの研究所を率いる識者に取材し、Z世代論への関心の高さと解釈の割れ方を記事にまとめました。

研究所が存在すること自体は悪いことではありません。ただし、専門の研究部門を維持し続けるビジネス上の理由がある組織が、Z世代論の供給源の少なくない部分を占めているという事実は押さえておく必要があります。テーマが「もう語り尽くされた」となっては困る立場の人たちが、次々と新しいZ世代論を更新し続けている構図です。

Z世代論は、若者ではなく年上世代を映す鏡

『Z世代化する社会』を書いた舟津昌平氏(京都大学)は、「若者とは社会を映し出す鏡である」と述べています。目立って見える若者の特徴は、実は若者固有の資質ではなく、その時代の社会が抱える構造をそのまま映し出したものだ、という指摘です。

Z世代論の多くは、若者の性質の説明ではなく、変化についていけない側の不安を言葉にしたものである。

これは的を射た見方だと考えます。「今の若者は転職をためらわない」と語られるとき、実際に起きているのは、終身雇用の前提が崩れ、転職市場そのものが整備されたという社会側の変化です。「Z世代はタイパを重視する」と語られるとき、実際に起きているのは、可処分時間あたりのコンテンツ量が過去と比較にならないほど増えたという環境側の変化です。

ニッセイ基礎研究所の指摘も同じ方向を向いています。Z世代という言葉が日本で広まった当初、その中心にいたのは学生でした。当時作られたイメージが更新されないまま、対象の中心が社会人に移った今も使われ続けている。つまりZ世代論は、実態の変化を追いかけるための言葉ではなく、最初に作られたイメージを維持するための言葉になっている可能性があります。

同じ構造は、若者に限った話でもありません。当サイトで以前取り上げたSetlogが流行した理由も、「Z世代のSNS疲れ」という括り方だけでは説明しきれず、加工文化そのものへの反動という、より広い動きの一部でした。世代というラベルは、複雑な現象を単純化して手渡すための取っ手にすぎません。

「でも実際に世代差はある」という反論への回答

ここまでの主張には、当然強い反論があります。「生まれたときからスマートフォンがあった世代と、大人になってから持った世代とでは、情報収集の仕方も働き方への価値観も、実際に違うではないか」という指摘です。これは正しい反論です。デジタル環境が生まれた時期によって形成されるという説明には、確かな根拠があります。

私たちもこの点を否定しません。環境の違いが行動に影響すること自体は事実です。問題にしているのは、その環境要因を「生まれ年による本質的な性格」にすり替え、15年以上の幅を持つ集団全員に当てはめてしまう点です。

同じ1997年生まれでも、都市部の大学に進学した人と、地方で早く就職した人とでは、経済環境も情報環境もまったく異なります。環境が行動に影響するなら、その環境の違いこそ見るべきであって、「生まれ年」という一つの軸に押し込めた瞬間に、説明力はむしろ落ちます。

実際、具体的なデータを見ると、世代差は「大きな性格の違い」ではなく「特定サービスの利用率」という、もっと限定された形で表れています。サイバーエージェント次世代生活研究所の調査では、Z世代と上の世代でもっとも利用率の差が開いたSNSは「BeReal.」でした。これは価値観そのものの違いというより、そのアプリが登場した時期にたまたま10代・20代だったかどうかという、タイミングの差で説明できる現象です。

世代差そのものは存在しても、それを「Z世代は〜」という一枚岩の言葉で語ることには無理がある、というのが私たちの結論です。差があるのは事実、その差を生んでいるのは「生まれ年」ではなく「その時何歳だったか」という巡り合わせ——この区別を保つだけで、Z世代論の多くはかなり慎重な書き方に変わるはずです。

「Z世代は◯◯だ」という語り方に、どちらの感覚が近いですか?

よくある質問

Z世代とは何年生まれ、何歳から何歳までを指しますか?

代表的なのはピュー・リサーチ・センターによる1997年から2012年生まれという区分です。国内では1996年生まれを起点とする解説もあり、2026年時点では上は20代後半から30歳前後、下は10代前半までと、15年以上の幅があります。

なぜZ世代論はこんなに数多く作られるのですか?

メディアにとっては毎年更新できる便利な企画枠になり、企業にとっては若年層向け商品を説明する共通言語になるためです。ニッセイ基礎研究所は、当初「学生中心」だったイメージが、対象の中心が社会人に移った今も更新されないまま使われ続けていると指摘しています。

Z世代という言葉自体を使うのは間違っていますか?

使うこと自体が誤りとまでは言えません。ただし15年以上の幅を持つ集団を一枚岩として語ると、実態を見誤ります。環境の違いが行動に影響することは事実でも、それを生まれ年だけの本質に還元しないことが必要です。

まとめ

「Z世代は◯◯だ」という言い切りは、書く側にとっても読む側にとっても心地よい形をしています。しかしその心地よさは、15年以上の幅を持つ集団を一つの言葉に押し込めることで生まれているにすぎません。

舟津昌平氏が言うように、若者に見える特徴の多くは社会そのものの変化を映しているだけかもしれません。ニッセイ基礎研究所が問うたように、Z世代論はこれまで、若者自身のためではなく、変化についていけない側を安心させるための物語として機能してきた可能性があります。

次に「Z世代は〜」という文章を見かけたら、それが誰にとって都合のよい説明なのかを、一度立ち止まって考えてみてください。

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