Setlogはなぜここまで流行っているのか。「加工疲れ」では説明できない本当の理由

【解説】Setlogはなぜ流行る?加工疲れだけが理由ではない
✒ コラム / 図版:タネアカシ編集部

1時間に1回、2秒だけ撮る。それだけのSNSアプリ「Setlog」が、中高生のあいだで無料アプリランキングの上位を独占しています。多くのメディアはこの人気を「加工疲れの反動」「タイパ重視」と説明します。間違ってはいません。ですが、それだけでは「なぜ他の非加工アプリではなくSetlogなのか」という問いに答えられません。Setlogが本当に消しているのは何なのか、考えてみます。

Setlogとは何か、1時間に1回だけ動画を撮るアプリ

Setlog(セットログ)は、1時間ごとに2秒だけ、インカメラまたはアウトカメラで動画を撮り、友達同士のグループで共有するという、韓国発のSNSアプリです。1日ぶんの2秒動画が自動でつながり、編集をしなくてもその日のVlogのようなものができあがります。SNSマーケティングを手がけるコムニコの解説によれば、2025年12月に韓国でリリースされ、2026年5月ごろから日本でも本格的に使われ始めたといいます。

広がり方も急でした。特に10代から20代前半のあいだで人気に火が付き、中高生を中心にSNSの無料アプリランキングで連日1位を獲得するほどの流行になっています。使い方はシンプルで、友達と遊びに出かけたときにグループを作ってお互いの視点で1日を記録したり、離れて暮らす友達とグループを組んで、何気ない日常を送り合ったりする使い方が広がっています。

ここまでは、多くの媒体がすでに報じている事実です。問題はここからで、「なぜ、数あるSNSのなかでこのアプリが選ばれたのか」という部分です。

実は「加工なしで日常を共有する」というコンセプト自体は、Setlogが初めてではありません。フランス発のBeRealが2022年前後に世界的に流行した先例があります。BeRealは1日1回、ランダムなタイミングで届く通知から2分以内に前後カメラで撮影して投稿するアプリで、「加工なし・1日1回・アルゴリズム非採用」を掲げていました。Setlogは、この系譜のうえに立ちながら、頻度を「1日1回」から「1時間に1回」へ増やし、投稿範囲を「友達全体」から「決めたグループだけ」へ絞ったアプリだと位置づけられます。

「加工疲れの反動」という説明のどこが足りないか

Setlogの人気を説明する記事の多くは、ほぼ同じ論調をとっています。編集や加工の手間がいらないのでタイパ(タイムパフォーマンス)がよい。Instagramのような「映えの強制」や加工に疲れた若者が、素の共有を求めている——というものです。Yahoo!ニュースの専門家コーナーでも、ITジャーナリストの高橋暁子氏が「なぜ若者は加工なしの共有を求めるのか」という論点でSetlogを取り上げています。

この説明は、事実として間違っていないと考えます。加工に疲れているという声が実際にあるからです。ただし、この説明には抜けている問いがあります。「加工なし」を求めるだけなら、写真をそのまま送り合うグループLINEでも十分にできる、という点です。加工疲れの解消だけがSetlogの魅力なら、わざわざ新しいアプリを入れる理由になりません。

Setlogが消しているのは、加工の手間ではない。友人関係を保つための手間そのものだ。

ここで注目したいのが、「1時間に1回、自動で記録タイミングが来る」という設計です。既存のSNSでは、投稿するかどうか、いつ投稿するか、何を投稿するかを、すべて自分で決めなければなりません。この「決める」という工程こそが、実は加工よりも重い負担だったのではないか、というのがこの記事の見立てです。

独自考察: 消えているのは加工ではなく「関係を保つ手間」だ

友人関係を保つには、本来かなりの労力がかかります。LINEで「元気?」と送る。既読がついたら返信を待つ。既読スルーされたら気にする。スタンプ一つ選ぶのにも、少しだけ気を使う。Setlogは、この「関係を保つための判断」をアプリ側が肩代わりする設計になっていると考えられます。

  • 投稿するかどうかを自分で決めなくてよい(1時間ごとに自動で記録される)
  • 何を撮るか悩まなくてよい(2秒しかないので、身構える暇がない)
  • コメントを考える負担が少ない(見るだけで「今日も生きてる」ことが伝わる)
  • 返信のタイミングに神経を使わなくてよい(リアルタイム性より記録の蓄積が主役)

従来のSNSでの「つながり」は、お互いに評価し合う投稿を通じて保たれてきました。いいねの数、コメントの内容、フォロワーの反応。そこには常に「どう見られるか」という緊張がつきまといます。ところがSetlogの2秒動画は、評価される前提そのものが薄い。加工の余地がほとんど無いほど短いので、比較のしようがないのです。

つまりSetlogが解決しているのは、「加工が面倒」という表面の悩みではなく、「友人関係を維持し続けるために、毎回何かを判断し続けなければならない」という、もっと根の深い疲労だと考えます。1時間ごとに強制的に記録が始まる仕組みは、一見不便に見えて、実は「今日はどうしよう」と悩む余地を奪うことで、関係維持のコストをほぼゼロに近づけています。

先例のBeRealとの違いも、この見立てを裏づけます。BeRealは基本的に友達全体に向けて公開する設計でしたが、Setlogはあらかじめ決めたグループの中だけで完結します。見せる相手が「友達全員」から「この5人だけ」に絞られるほど、評価されるかもしれないという緊張は薄れます。Setlogが加工なしという点でBeRealと似ていながら広く定着しつつあるのは、投稿範囲を狭めたことで、この緊張をさらに一段階下げたからだと考えられます。

「新しい依存を生むだけでは」という反論への回答

ここまでの見立てに対して、当然強い反論があります。「1時間ごとに記録を強制されるアプリのどこが自由なのか。加工疲れから解放されたのではなく、今度は"記録し続けなければ"という新しい強迫観念に置き換わっただけではないか」という指摘です。これは筋が通っています。実際、ネットのトラブル対策にあたる団体が、中高生のSetlog利用について注意を呼びかけている例もあります。

この反論に、私たちは正面から同意します。Setlogが「加工疲れ」を解決していても、「記録し続ける疲れ」まで解決しているとは言えません。1時間に1回という頻度は、意識せずとも生活のリズムそのものをアプリに合わせてしまう危険をはらんでいます。周囲の人や場所が、本人の意図を超えてグループの相手に伝わり続ける点も見過ごせません。

先例のBeRealでは、通知から2分以内という制約が裏目に出た例も報じられています。ITmedia NEWSは、銀行員が業務端末や社内の様子を写り込ませたまま投稿してしまうなど、時間の焦りが不用意な情報漏えいにつながった事例を伝えています。Setlogの制約時間はBeRealより緩やかですが、「その場ですぐ撮る」という仕組みが油断を誘いやすいという構造そのものは変わりません。

確認できていること・できていないこと。 ネットのトラブル対策を行う団体がSetlogの利用について注意を呼びかけている事実は確認できましたが、その注意点の具体的な中身までは、この記事の執筆時点で一次情報を確認できていません。断定を避け、「四六時中の記録には一般的な注意が要る」という一般論にとどめます。

それでも私たちがSetlogを「加工疲れからの避難先」以上の存在だと考えるのは、依存の質が、これまでのSNS依存とは違うと見ているからです。これまでのSNS依存は「他人からどう評価されるか」という不安を核にしたものでした。Setlogの2秒動画は評価される情報量そのものが少なく、比較や優劣が生まれにくい。不安を核にした依存から、習慣を核にした依存へと、性質が移っているのではないか、というのが私たちの見立てです。習慣化した依存が安全という意味ではありません。質が違う以上、対策の仕方も従来のSNS疲れ対策とは変えたほうがよい、という話です。

保護者や学校の立場からできることも、この違いを踏まえると見えてきます。「投稿をやめさせる」という発想は、投稿判断の負担がもともと小さいSetlogでは効きにくいでしょう。それよりも、「1時間ごとの通知に反射的に反応しなくてよい」「今日は撮らない選択もできる」という、記録することそのものを一度立ち止まって選び直せる感覚を、あらかじめ言葉にして共有しておくほうが現実的だと考えます。

あなたは「加工なし」を前提にしたSNSを使いたいですか?

よくある質問

Setlogとは何のアプリですか?

1時間に1回、インカメラまたはアウトカメラで2秒だけ動画を撮り、友達と共有するとその日1日分が自動でVlogのようにまとまる、韓国発のSNSアプリです。2025年12月に韓国でリリースされ、2026年5月ごろから日本でも広がりました。

Setlogはなぜ若者に人気なのですか?

編集や加工の手間がなく、タイパ(タイムパフォーマンス)がよいことに加え、Instagramのような「映えの強制」に疲れた反動が理由として語られています。ただしそれだけでなく、友人関係を保つための連絡や返信という手間そのものを減らす設計になっている点も大きいと考えられます。

Setlogを使ううえで注意することはありますか?

1時間ごとに自動で記録が始まるため、周囲の人や場所、生活のリズムが本人の意図を超えて共有相手に伝わりやすい点には注意が必要です。ネットのトラブル対策を行う団体も、中高生の利用にあたって注意を呼びかけています。

まとめ

Setlogの人気は、「加工に疲れた若者が素の共有を求めている」という説明だけで語られがちです。それは間違いではありませんが、十分でもありません。加工なしの共有だけなら、既存のアプリでも実現できるからです。

Setlogが実際に減らしているのは、友人関係を保ち続けるために毎回何かを判断し、選び、気を使うという、目に見えない手間そのものだと私たちは見ています。1時間ごとに強制的にやってくる記録タイミングは、不便に見えて、実は「今日はどうしよう」という迷いを奪う仕組みです。

ただしそれは、記録し続けること自体への依存という、別の負担と引き換えでもあります。何かが便利になるとき、たいてい別の何かに置き換わっているだけだということを、Setlogは分かりやすく見せてくれています。

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