ボーナス(賞与)は退職すると本当にもらえないのか、支給日在籍要件を確認する

【大和銀行事件】ボーナスは退職すると本当にもらえないのか
💡 答え合わせ / 図版:タネアカシ編集部

⚡ 結論だけ先に

  • 賞与に「支給日に在籍していること」を条件にする会社は多く、自己都合退職ならこの取り扱いは有効とされている。
  • 根拠は大和銀行事件(最高裁第一小法廷 昭和57年10月7日判決)。就業規則に明記され、内容が合理的なら有効。
  • ただし整理解雇など会社都合退職の場合は、要件の適用が制限された裁判例がある

「退職を伝えたらボーナスがゼロになった」という体験談と、「それは違法ではないか」という反論が、知恵袋やSNSに繰り返し出てくる。実際にはどちらの言い分にも一理あり、退職の仕方によって結論が変わる。一次資料である判例に当たって整理する。

はじめに: この記事は民法・労働契約に関する判例をもとにした一般的な説明です。就業規則の具体的な文言や退職の経緯によって結論は変わります。実際のケースは社会保険労務士・弁護士、または労働基準監督署の総合労働相談コーナーにご相談ください。

まず答え:支給日在籍要件は有効なのか

賞与は、労働基準法上当然に発生する権利ではなく、使用者の決定や就業規則・労使慣行によって初めて発生するとされている。そのため「支給日に在籍する者にのみ支給する」という条件(支給日在籍要件)は、就業規則に明記され、内容が合理的であれば有効というのが最高裁の立場だ(大和銀行事件・最高裁第一小法廷 昭和57年10月7日判決)。

この事件では、賞与の対象期間中に在籍していたにもかかわらず、支給日前に自己都合で退職した従業員が賞与を請求したが、最高裁はこれを認めなかった。自ら退職日を選べる自己都合退職者は、支給日をふまえて退職日を決めることができるという理屈だ。

🔍 よくある思い込みと、実際のところ

思い込み賞与は働いた分の対価だから、対象期間に在籍していれば必ずもらえる
実際賞与は就業規則・労使慣行によって発生する。「支給日在籍要件」が合理的な内容で明記されていれば、自己都合退職者への不支給は有効とされている

根拠: 大和銀行事件(最高裁第一小法廷 昭和57年10月7日判決)。

賞与は「働いた分の対価」ではなく「支給日にいた人への処遇」に近い、というのが判例の考え方だ。

なぜ答えがバラつくのか、自己都合か会社都合か

ネット上で意見が割れるのは、自己都合退職と会社都合退職を区別せずに語られることが多いからだ。自己都合なら大和銀行事件の通り原則有効。しかし整理解雇などの会社都合退職では、労働者が退職日を選べないため、要件をそのまま適用するのは合理的でないとした裁判例がある(リーマン・ブラザーズ証券事件・東京地裁 平成24年4月10日判決)。

さらに、会社側の都合で支給日自体が例年より大幅に遅れた場合、支給日に在籍していない退職者であっても賞与の対象になるとした判例もある(ニプロ医工事件・最高裁第三小法廷 昭和60年3月12日判決)。「支給日に在籍していなければ一律にもらえない」という単純な話ではない。

判断の分かれ目

⚖ どちらになるかの分かれ目

ケース結論根拠
自己都合退職(自分で退職日を選べる)支給日在籍要件は有効、原則もらえない大和銀行事件 最高裁昭和57年10月7日判決
整理解雇など会社都合退職要件の適用が制限される場合があるリーマン・ブラザーズ証券事件 東京地裁平成24年4月10日判決
会社都合で支給日が大幅に遅延退職後でも支給対象となりうるニプロ医工事件 最高裁昭和60年3月12日判決
就業規則に規定がなく慣行も不明確会社の裁量が争われやすい就業規則・労使慣行の記載内容次第

見るところ: まず「退職日を自分で選べたかどうか」で分かれ、次に「支給日が予定通りだったか」で結論が変わる。

実際にどう動けばいいか

「支給日在籍要件があるから」の一言で片付けられて納得がいかないときは、順番に確認するのが近道だ。

📝 このとおりに動けばいい

  • STEP 1就業規則・労働契約書を確認する賞与の支給条件に「支給日在籍要件」が明記されているか、その文言を確認する。
  • STEP 2自分の退職が自己都合か会社都合かを整理する離職票の離職理由欄や退職の経緯(自分で日付を選べたか)を確認する。
  • STEP 3会社都合なのに不支給とされた場合は専門家に相談する整理解雇や支給日の大幅な遅延が絡む場合、要件の適用が制限される余地がある。

相談先: 都道府県労働局・労働基準監督署の総合労働相談コーナー(無料)、法テラス、社会保険労務士、弁護士。

支給日在籍要件、納得できる?

よくある質問

賞与に支給日在籍要件があると、退職する前に辞めても一切もらえないのですか?

就業規則にその定めがあり、内容が合理的であれば、自己都合退職の場合は支給日に在籍していないと原則もらえないとされています(大和銀行事件・最高裁第一小法廷 昭和57年10月7日判決)。ただし会社都合の退職では、この限りではないとした裁判例もあります。

整理解雇された場合も、支給日在籍要件は適用されますか?

退職日を自分で選べない整理解雇などの会社都合退職では、支給日在籍要件をそのまま適用するのは合理的でないとした裁判例があります(リーマン・ブラザーズ証券事件・東京地裁 平成24年4月10日判決)。

就業規則に賞与の支給条件が書かれていない場合はどうなりますか?

明文の規定がなくても、長年の労使慣行が支給条件として認められることがあります。ただし争いになりやすいため、実際のケースは社会保険労務士や弁護士、労働基準監督署の総合労働相談コーナーに相談することをおすすめします。

まとめ

ボーナスの支給日在籍要件は、自己都合退職であれば原則有効というのが最高裁の立場だ。ただし会社都合退職や支給日の大幅な遅延がからむ場合は話が変わる。「支給日在籍要件があるから」の一言で納得する前に、自分の退職の経緯を整理してみてほしい。

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📌 出典:大和銀行事件(最高裁第一小法廷 昭和57年10月7日判決)、リーマン・ブラザーズ証券事件(東京地裁 平成24年4月10日判決)、ニプロ医工事件(最高裁第三小法廷 昭和60年3月12日判決)。判例の解説はeiko.gr.jpほかを参照。 個別の就業規則や退職の経緯によって結論は変わります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の法律相談にはあたりません。

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