サンクコスト効果とは何か、「もったいない」で損を重ねる心理

【解説】サンクコスト効果とは、「もったいない」の心理
🧠 人間の不思議 / 図版:タネアカシ編集部

⚡ 30秒でわかるまとめ

  • サンクコスト効果とは、すでに払った費用を惜しんでやめられなくなる心理のこと。
  • 1985年の劇場チケット実験で、満額を払った人ほど観劇回数が多いことが確認された。
  • 背景には損失回避と、やめることを「失敗」と見られたくない社会的な懸念がある。

課金したソシャゲ、合わないと感じ始めた映画、うまくいっていない習い事——「もったいないから」とやめられなかった経験はないでしょうか。それはサンクコスト効果と呼ばれる、心理学で確認された人間の傾向かもしれません。

サンクコスト効果とは何か

サンクコスト(埋没費用)とは、すでに支払ってしまい、どう行動しても回収できない費用や時間のことです。サンクコスト効果は、この回収不能なコストを惜しむあまり、合理的に考えればやめた方がよい状況でも継続を選んでしまう心理的傾向を指します。

🔍 「気の持ちよう」ではなかった

誤解「もったいないから続ける」のは、単なる個人の性格や気の持ちようの問題。
実際1985年の実験研究で、人間の行動として再現性のある心理現象だと確認されている。

ここが分かれ目: 経済学の理論として語られてきた「サンクコストの誤謬」を、心理学の実験で裏付けたのがこの研究です。

この概念を心理学の実験で示したのが、アークスとブルマーによる1985年の論文「The Psychology of Sunk Cost」です。学術誌『Organizational Behavior and Human Decision Processes』に掲載されました。

1985年の劇場チケット実験

この論文で紹介されている代表的な実験が、オハイオ大学の劇場で行われたシーズンチケットの調査です。最初の60人の購入者に、ランダムに異なる割引価格でチケットを販売しました。

🎭 劇場チケット実験の中身

  • STEP 13つの価格でチケットを販売定価、2ドル引き、7ドル引きの3グループにランダムに分けて販売。
  • STEP 2その後半年間の観劇回数を追跡各購入者が実際に何回劇場に足を運んだかを記録。
  • STEP 3満額を払った人ほど多く来場割引額が大きいグループほど、観劇回数が少ない傾向が見られた。

図の見方: Arkes & Blumer(1985)の実験内容を、当編集部が要約した概念図です。

払った金額が大きいほど、「元を取らなければ」という気持ちが強く働く。

なぜ「もったいない」から抜け出せないのか

研究では、サンクコスト効果が生じる要因として主に2つが挙げられています。ひとつは損失回避——すでに払った分を無駄にしたくないという心理です。もうひとつは、途中でやめることを周囲から「失敗」とみなされたくないという社会的な評価への懸念です。

⚖️ 「続ける」と「やめる」、それぞれの心理

やめる(合理的な判断)

  • すでに払った分は戻らないと割り切る
  • 今後の見込みだけで判断する
  • 浮いた時間・お金を他に使える

続ける(サンクコストに引きずられる)

  • 払った分を無駄にしたくない
  • やめることを「失敗」と見られたくない
  • 今さら方向転換しづらいと感じる

図の見方: Arkes & Blumer(1985)などで指摘されている心理的要因を、当編集部が対比の形に整理したものです。

📅 サンクコスト効果を示した研究

1985年 アークス&ブルマーが「サンクコストの心理学」として実験研究を発表した年

出典: Arkes, H.R. & Blumer, C.(1985)"The Psychology of Sunk Cost", Organizational Behavior and Human Decision Processes, Vol.35。

日常に潜むサンクコストの場面

サンクコスト効果は、日常のさまざまな場面で語られる考え方です。合わないと感じ始めた映画を最後まで見る、ソーシャルゲームの課金をやめられないといった場面が、応用例としてよく挙げられます。

💭 サンクコストが働きやすいと言われる場面

課金したゲームの継続 合わない映画を最後まで見る 読みかけの分厚い本 成果の出ない習い事

図の見方: サンクコスト効果の一般的な応用例としてよく挙げられる場面です。これらの個別事例そのものを検証した学術研究があるわけではありません。

もちろん、途中でやめることが常に正解というわけではありません。ただし「もう払ってしまったから」という理由だけで続けるかどうかを決めているなら、それは判断材料として本来含めるべきではないコストに引きずられている可能性があります。

「もったいないから」とやめられなかった経験はありますか?

よくある質問

サンクコスト効果とは何ですか?

すでに支払って回収できない費用や時間(サンクコスト=埋没費用)を惜しみ、合理的に考えればやめるべき状況でも続けてしまう心理的傾向です。1985年にアークスとブルマーが心理学研究として発表しました。

劇場チケットの実験とはどんな内容ですか?

オハイオ大学の劇場が、最初の60人の購入者にランダムに異なる割引価格でシーズンチケットを販売した実験です。結果、満額を支払った人ほど、その後半年間により多くの公演に足を運んだことが分かりました。

なぜ「もったいない」と感じてやめられなくなるのですか?

支払った分を無駄にしたくないという損失回避の心理に加え、途中でやめることを周囲から「失敗」とみなされたくないという社会的な懸念も、継続を後押しする要因とされています。

まとめ

サンクコスト効果とは、回収できないコストを惜しんで、合理的な判断からずれてしまう心理です。1985年の劇場チケット実験は、これが個人の性格ではなく、人間に共通しやすい傾向であることを示しました。

「もったいないから」で判断に迷ったときは、一度「これから先の見込みだけで考えたらどうか」と問い直してみると、違う答えが見えるかもしれません。

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📌 出典:Arkes, H.R. & Blumer, C.(1985)"The Psychology of Sunk Cost", Organizational Behavior and Human Decision Processes(sciencedirect.com)ほか。

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